曽山哲人氏
曽山哲人氏

サイバーエージェントの研修では、メンバーに成長曲線を描いてもらい、それを見せ合うというセッションがあります。これはかなり盛り上がります。

「これまでの自分を振り返ることができてよかった」とか「今後の参考になった」という感想もあるし、研修したメンバー同士や、同じ部署内で成長曲線を見せ合うと、お互いの心理状況がよくわかったり、課題を逆に指摘してもらえるというメリットもあります。

「このころは○○に異動になって、成長できないんじゃないかって感じていたんだよね」とか「うまくいきすぎていて、このままじゃマズいんじゃないかって内心焦っていたなあ」とか、その時々の「キャリアの消化不良」を見つめ直したり、キャリアの消化不良を抜け出した「ターニングポイント」はどこにあったかを、気付いてもらうのも狙いのひとつです。

たとえばメンバーがターニングポイントとしてあげる出来事として、「事業責任者になりたいという思いを捨てずに言い続けた」とか、「とにかく、状況を変えようと先輩に相談した」など、自分の意見を誰かに伝える行動が多くあげられます。

意思表明は、キャリアの消化不良の一番の特効薬だと思います。自分の思いを言葉にして伝えれば、上司や先輩、周囲のメンバーがあなたのしたいことに気付いて、何らかのアクションを起こしてくれる。このとき、応援してくれてもダメ出しでもいいのです。それによってあなた自身の中に学びが増えて、現状を変化させる決断が生まれます。

決断をすれば、自然に仕事のしかたや、状況も変わってくるでしょう。そこまでいって初めて、成長角度を上向きにする環境が整うのです。

ですから、「頑張っているのに認めてくれない」「成長している感じがしない」と思ったら、あなた自身の意思表明不足かもしれません。

成長角度に気付かないワナ

自分が成長したい、キャリアを高めたいと思ったら意識して成長曲線の角度を上向きにすることが大事です。これは入社して1年目だとしても持っているとよい意識だと思います。なぜなら、同期の入社でも、はじめから持っている成長曲線の「角度」は人によって違うからです。

例えばボールを投げるのに斜め上45度の方向へ投げれば遠くまで飛んで行きますが、20度であればそこまで飛びません。あるいは下向き45度で投げたら、ボールを地面に叩きつけていることになります。キャリアのスタート時に、自分がどんなフォームでボールを投げようとしているのか自覚している人は少ないと思いますが、ボールを遠くに飛ばしたいのなら、早めにフォームを修正したほうがいい。

ひとつの例で説明しましょう。新卒のメンバーが2人います。「3年後にマネージャーになる」と宣言しているAさんと、「とりあえず、どんな仕事でもいいです」と思っているBさんとでは、成長角度はAさんの方が断然上向きです。

Aさんタイプの人は、高校時代に部活のキャプテンを務めていたとか、大学時代に企業経営に携わったことがあるといったマネージャー的な成功体験を積んできている人である場合が多いのです。

学生時代などに周囲に何かしらの宣言をして失敗も成功も体験している経験を踏まえて社会人でもそのスタンスでいこうと思っている人はその分の経験が豊富です。こういう人は最初から志や目標を掲げて周囲に宣言しているから、チャンスが来たときに抜擢される確率はとても高くなります。成長角度が上向きの人は、それだけでチャンスが多くなるのです。上司や採用担当者が「意欲」や「ポテンシャル」と呼ぶのは、このような成長角度のことです。

意思を表明すると時折「無理だ」「どうせできないだろう」などの否定的な反応も受けることがありますが、その一方で応援してくれる人も増えます。

もし、あなたがBさんタイプの人で、Aさんのような人が近くにいたら、スタートは同じでもいつの間にか自分だけ置いていかれることになりかねません。