この秋、トヨタが軽に参入する。「死活問題や!」とダイハツディーラー。スズキは間隙を突いて首位に返り咲くのか。そして三菱・日産が提携で目指すものは……。今、この市場から目が離せない。

「死活問題や!」「絶対にやってほしくはない」

10年9月28日午前、大阪府池田市のダイハツ本社。乾いた怒声が上がる。伊奈功一社長、白水宏典会長、神尾克幸副社長ら経営陣と、約30人の販社の社長や会長が対峙していた。30人は地場資本の経営者ばかり。ダイハツ資本の販社関係者は一人もいない。このときダイハツは、トヨタへの軽自動車のOEM供給について、販社に対して正式に説明したのだった。

「事前に言うときますわ。一応みなさんのご意見は聞きますが、何言われてももうあきまへんよ。決まったことですから」

ダイハツ側はクールだった。事実、伊奈は午後に上京し、17時からトヨタ東京本社で一丸陽一郎トヨタ副社長(退任予定)と会見を行う手筈になっていた。

トヨタが軽に参入する動きがあることは、当然ながら30人は掴んではいた。が、販社の立場は弱い。正式な説明報告は、最後に形式だけとなったのである。

「年間6万台、月に直せば5000台です。それ以上は売りませんから、安心を」。複数の関係者によれば、ダイハツ側は販社に対してこう説得したそうだ。トヨタに供給する数量は、ダイハツの国内販売台数のほぼ10分の1。

ただし、6万台以上に増えていくと予想される先行事例がある。02年からスズキは、資本関係もない日産に軽のOEM供給を始めた。このとき、スズキは業販店に対して「日産の軽が売れたらどうしようと、心配もあるでしょうが、日産が扱うのは1車種で月間3000台。みなさん、もっと自信をもってください」(鈴木修会長=現在は社長兼会長)などと、同じように話していたのだ。

しかし、震災前の今年2月で見ても、日産はスズキからのOEM車2車種だけで1万3000台以上売っていた。しかも、日産「モコ」が7636台に対し、ベース車のスズキ「MRワゴン」は3282台と販売量は倍以上もあった。

軽自動車業界相関図
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軽自動車業界相関図

日産の志賀俊之COOは、次のように話す。「最初は少しすれば、軽からマーチなどの小型車にお客は戻ってくると考えてました。ところが、戻ってくるどころか軽を欲しがる人は増え続けたのです」。日産は、スズキから2車種、三菱自工から4車種の供給を受けている。

念のために整理すると、軽の生産メーカーは(1)ダイハツ、(2)スズキ、(3)三菱自工、(4)ホンダの4社(富士重工は軽の開発・生産からの撤退予定)。ダイハツはトヨタ系の富士重工と今秋からトヨタに、スズキは日産とマツダに、三菱自工は日産に、軽のOEM供給を行っている(図参照)。(文中敬称略)