図書館ダッシュが懐かしい。学生時代の話である。大学の掲示板でたとえば「男女雇用機会均等法を社会学的に考察せよ」というレポート課題が発表される。それを見た学生は、次に何をするか。私たちは図書館へ走った。参考になりそうな本を見繕って借りるためである。課題にぴったりの本はそう多くない。この競争に敗れると、地元の図書館に向かうか、高い本をわざわざ買うか、いずれにせよ面倒なことになるので必死だった。

こんな25年前の話を今の学生にすると、きょとんとされてしまう。「ああ、昔はネットで調べられなかったからですね」。当時の苦労は理屈ではわかるけれど、感覚としては掴みにくいようだ。それは、現在の中高年世代が、親から戦中戦後の苦労話を聞かされたときの感じにちょっと似ているかもしれない。

生まれながらネットやケータイがあって当たり前の世代。デジタルネイティブと呼ばれる人々が間もなく社会の一線に出る。本書は彼らと向き合うための傾向と対策を示唆する。

ネイティブは、独特の文化を張り巡らせている。たとえば、「即返」のプレッシャーは相当なものらしい。彼らにとってケータイ・メールは「連絡」の手段というより「会話」に近いものだからだ。疎遠になっていた友人にコンタクトするため、わざと頻繁にアドレスを変える若者も多いという。「メアド変えたよ」がコミュニケーションのきっかけになるからである。

要するに、ノンネイティブが「便利」だから情報技術と付き合うのに対し、ネイティブは使うこと自体が目的化している。即返しなければならなかったり、会議中でもケータイを優先するなど、「ケータイ・コミュニケーションは、実は時間と空間に拘束されている」という著者の分析には頷かざるをえない。

文化の違いを、「近頃の若い者は……」で済ませていけないことは自明だ。何しろ向こうはどんどん増え、こちらは減る一方なのだから。積極的に対応し、ビジネスの成功につなげたい。

4章と5章では、ネイティブ指向の成功事例が紹介されている。「ニコニコ動画」のドワンゴ、「モバゲータウン」のDeNA……。それぞれ簡潔に説明されていてわかりやすく、大いに参考になった。ただ、個々の事例からヒントは得られるものの、肝心の処方箋部分は、「結局はアナログが大切」といった無難な結論にとどまっており、その点やや食い足りないと感じる向きもあるかもしれない。

著者は1976年生まれで、かなり若い。世代的にネイティブ側に近いからこそ危機意識も大きいのだろう。両世代をあえて分類・ステレオタイプ化しつつ、「先輩たち、そろそろヤバイですよ」とアドバイスしてくれているのだ。もっとも、いまだに携帯電話すら持っていない私など、珍獣系の新カテゴリーに分類され、忠告の対象外になってしまいそうだが。