安倍晋三首相はなぜ突然辞任したのか。統計データ分析家の本川裕氏は「コロナ対策、内閣支持率、実質GDPという3つのデータが、政権が末期であることを示していた。コロナ対策で機動性を欠き、7年8カ月のアベノミクスが水の泡となった責任を痛感したのではないか」という――。

統計データは知っている、安倍首相が突然の辞任を決めた本当の理由

8月28日、安倍晋三首相は官邸で記者会見し、持病の潰瘍性大腸炎の再発により首相の職務継続困難という理由で辞任する意向を表明した。その後、次期首相となる自民党の後継総裁選挙が自民党の3候補によって行われている。各候補はそれぞれ政策を主張しているが、結局、次期総裁=次期首相は「派閥の意向」で決まりそうだ。

ここで、7年8カ月と連続在職日数が歴代最長となった第2次安倍政権の評価を論じつくすことはできないが、私が注目するデータで政権の帰趨を振り返ってみよう。取り上げるデータは、コロナ対策、内閣支持率の推移、そして実質GDPの推移の3つである。

国民評価で振り返る安倍政権のコロナ対策

安倍政権の最後の大仕事がコロナ対策であったことは間違いなかろう。そこで、政権の期間全体にわたるデータに先立って、まず、コロナ対策に関するデータを見てみよう。

全世界を覆っている新型コロナの感染拡大による人的被害については、図表1(左側)の人口10万人当たりの感染者数や感染死亡者数に見られるように、各国で感染状況が大きく異なっている。

日本の10万人当たりの感染者数は31人と最大の米国の1396人の2.2%、感染死亡者数は0.8人と最大のベルギーの84.7人の0.9%と格段に少なくなっている。取り上げた欧米を中心とする先進国14カ国中の順位は感染者数でも感染死亡者数でも13位と韓国を除けば最少である。