PANA=写真
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東京電力新社長 西澤俊夫(にしざわ・としお)
1951年、長野県生まれ。京大経済学部卒業後、東京電力入社。企画部長などを経て2008年に常務。原発事故で引責辞任する清水正孝社長の後継として、今年6月の株主総会で社長就任予定。


 

190あまりの発電所を持ち、年間の設備投資額は6000億円を超え、取引先企業は4000社とも5000社ともいわれる。民間の電力会社としては世界でもトップクラス。上座を譲るのは、皇族や総理大臣など政府首脳や高官くらい。平時であれば、まことにご同慶の至りだが、西澤氏の前に広がるのは、途方もなく長い茨の道だ。

同じ企画畑出身の勝俣恒久会長の直系で、行政当局とのパイプも太い。原発事故後は、政府との事故対策統合本部で事務局長を務め、官邸や経済産業省など関係各所との折衝にあたってきた。「明るい性格」との声もあるが、「世間の目」という重圧は凄まじい。

原発事故で巨額の賠償責任を負う一方、電力の安定供給の責任も果たさなければならない。政府の賠償支援と引き換えに資産売却、投資や賃金・賞与カットなどの経費削減といったリストラ策で、今期1兆1000億円規模の合理化策を発表している。

それも焼け石に水だ。原子炉から漏れ出る放射能を封じ込め、放射性物質で汚染された広大な土地や瓦礫の処理費用は最大で20兆円との試算もある。賠償金と処理費用が、これから先何年、何十年と東電につきまとう。

公的支援なしで、資金を捻出することはできない。東電の株価は300円前後と額面割れが続いているが、投資家は実質的に経営破綻していることを見抜いているといっていい。東電は、政府の公的管理下で経営を続けなければならないのだ。そんななかで船出を迎える新社長の初仕事は、被災地住民と自治体を巡る土下座行脚である。