事業、研究開発、知財の「三位一体経営」

<strong>三菱電機 取締役会長 野間口 有</strong>●1940年、鹿児島県生まれ。65年京都大学大学院理学研究科修士課程修了後、同社入社。情報システム研究所長、その後、常務取締役開発本部長、社長を経て2006年から現職。知財戦略に関しても見識の高い重鎮である。
三菱電機 取締役会長 野間口 有●1940年、鹿児島県生まれ。65年京都大学大学院理学研究科修士課程修了後、同社入社。情報システム研究所長、その後、常務取締役開発本部長、社長を経て2006年から現職。知財戦略に関しても見識の高い重鎮である。

ここまで三菱電機の製造現場やモノづくりの強さを紹介したが、知的財産戦略、特に国際標準化活動への積極的な取り組みにも触れておかなければならない。映像、通信、産業用ネットワークなどの分野で、市場のグローバル化に対応した標準化戦略を強めていることが、製品競争力を強化するとともに知財収入の増加を促し、経営の土台をより強固なものにするテコの役割を果たしているからだ。

FA統合システムのe|ファクトリーでは、機器同士をつなぐネットワーク技術の「CC|Link(CCリンク)」が、国際標準規格として市場開拓の強力な武器になっている。ネットワークに強く求められる通信の互換性、接続製品の豊富さに加え、システムやアプリケーション構築の際の生産効率の高さなどが国際標準として認められた結果だ。単に特許を取得するだけでなく、それらをいかに標準規格の中に埋め込んでいくか、そのアライアンスの巧拙が知財戦略そのものを左右する典型的な事例といえる。

三菱電機の中で早くから国際標準の重要性を訴えてきた野間口有会長は、CCリンクが日の目を見るまでのエピソードとともに、今後ますます重みを増す国際標準のあり方について考えを述べた。

「CCリンクを打ち出す際に、国に決めてほしいといっても、決めてもらえませんでした。このままでは独シーメンスや米ロックウェルなど欧米勢の蹂躙を許すだけになるからわが社でやろうと、日本国内、中国、東南アジアの賛同者を募ってやってきたのです。うちのFA部門は“従う標準”から“作る標準”に取り組んできましたが、これからは自分で作る標準、使わせる標準が増えていくと思います」