散文調にたくさんのことが書いてあり、「結論はどれだろう?」と探させるような文書では、読み手に負担をかけてしまいます。文章にはいろいろな型がありますが、その意味でも、ビジネス文書では、結論を先に示して、理由や詳細は必要に応じて読めるように添えていく形式がいいと思います。

書いた文章は必ず一度、読み手の立場になって読み返してみることも大切です。いま述べたように過剰な部分や曖昧な点がはっきりするだけでなく、自分が座標軸のどこにいるのかが客観的な立場から見えるからです。

自分の立ち位置がはっきり決められないという場合はキーワードを1つだけ突き詰めていくのではなく、たとえば「質と量」「官と民」「機会均等と結果の平等」というように、対立する概念を常に置いて、その中で「自分はどうしたいのか?」を書くのも秘訣です。そうすることによって、比較的わかりやすい文章になりやすいのです。

いまは、黙っていればわかるという時代ではありません。私が現在のポジションについたのは、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の三行統合が行われた2002年のことです。

そのとき、外のいろいろな方からアドバイスをいただいたことの1つが、社長自らが自分自身の言葉で率直に語りかけたほうがいい、それもコンスタントにメッセージを発したほうがいいということでした。それぞれ違う風土で育った人間が集まる組織ですから、結局それしかないのです。

これからは企業の経営統合がますます進み、多様化が加速します。その中で、「書く」という行為は、いまにも増して重要なコミュニケーション手段の1つになってくるはずです。

(小山唯史=構成 清水博孝=撮影)