潰れるなんて一度も考えていなかった

9月15日、敬老の日の月曜日。外出先から自宅に戻った吉岡卓司(35歳、仮名)の携帯電話がメールを受信。と思う間もなく呼び出し音が鳴った。

「ちょっと、今すぐニュース見て!」

ともにリーマン・ブラザーズ証券の同僚だった。急いでつけたテレビ画面には、「リーマン経営破綻」のニュースが。

唖然、呆然……日本法人の業務停止命令が出たと聞いても実感がわかなかった。翌16日朝、自宅から30分足らずの六本木ヒルズへ。近寄ってくる報道陣を避けつつ、オフィスに入った。アメリカ本社の破産法申請を告げるメールを確認した。部署ごとに上司が口頭で説明した。

「確かに、2月頃からちらほらと人が辞めていたし、救済が難航していると報道されてもいた。でも、本当に潰れるなんて一度も考えていなかった」

昼過ぎから、オフィスの電話が次々と鳴り始めた。大半は、内外の証券会社からのヘッドハンティングだった。吉岡さんも、その後1週間で10本以上電話を受けた。オフィス近隣のコーヒーショップで待ち構えるヘッドハンターもいた。

「あの数週間前、訪問先で『いい会社にお勤めですね』と言われ、『いやーそれほどでも』と謙遜してた。恥ずかしい」

在籍当時の年収は1500万円。転職先との契約では多少上がったという。

「当時の職階だと基本給は1000万円。まあ、普通に仕事してたらもらえる額だけど、とにかく長時間働くから、時給で計算したらアルバイト並み」と苦笑い。「以前は年収10億円クラスもいたらしいが、最近は多くても2億~3億円だったろう」。噂でしかないが、と付け加えた。

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