経験20年以上のパートが80人いるのが王将の強み

「ほかにもいくつかのイノベーションがありますが、私があえてひとつ挙げるとすれば、うちの会社は人を大切にします。それは正社員だけではない。パートさん、アルバイトさんも大切にする。その証拠に20年以上、王将で働いているパートさんは80人もいる。そんな会社はありませんよ」

鈴木は続けた。

「現在、50歳とか60歳近いパートのおばちゃんに会うと、ほんとに頭が下がる。だって、その人たちは青春時代を王将に賭けてくれたのだから。待遇も悪くはないですよ。でも、彼女たちは待遇がいいから王将で働いているわけじゃない。おばちゃんたちはみんな責任感が強いんです。自分がいなければ店がまわらないことをよく知っている。カリスマパートのおばちゃんもいます。常連さんが店にやってきて、『おい、どうした、今日はあのおばちゃんがおらへんやないか、あの人がおらんかったら、今日は食べずに帰るわ』……。

やっぱり、王将の強さは人なんです。まあ、論より証拠です。一度、うちを支えているパートさんに会ってみてください」

そう言われて、私はカリスマパートの大谷多美子さん(51歳)に会うために大阪の堺浜寺店へ向かった。ちなみに、大谷さんは王将に入って24年目だ。10年目ではハワイ旅行、20年目では夫婦でハワイ旅行という表彰を受けている。永年勤続表彰に付いてくる報奨の旅行も王将では正社員、パートで差別はない。社長だろうと、パートだろうと同じである。大谷さんの近頃の口癖は「30年表彰までは絶対に頑張る」のだそうだ。