コロナ禍で仕事を失くす人が増えている。この動きはいつまで続くのか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「産業構造が3密回避型に転換しつつある。その結果、年収500万円未満で、テレワークに切り替えづらい職種の人たちが、前倒しで職を失う恐れがある」という――。
クイック薪焼き
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3密回避の「非接触」「遠隔」「超臨場」ビジネスへ急転換

コロナショックで航空・旅行・観光・飲食・小売業など多くの産業の収益が悪化している。恐ろしいのは、それと同時にダメージを受けている産業でリストラが進んでいることだ。コロナが収束すれば再び元の仕事に戻れると思っている人がいれば、その見通しは甘いと言わざるをえない。

たとえば、上場企業の外食産業主要100社の今年度の閉店数は約1200店に達している(7月29日時点、日本経済新聞社調査)。

コロワイド、ワタミは1割強の店舗を閉店するほか、ジョイフル、吉野家なども相次いで閉店計画を発表している。いったん閉店すれば再開するのに時間がかかる。コロナが長期化すればさらに閉店する店舗は増えるだろう。

コロナで「外食産業を含めた既存の産業が大きく変化する」

同時にコロナ危機を契機に、外食産業を含めた既存の産業が大きく変化すると見る識者は多い。

産業戦略研究所の村上輝康代表は『生産性新聞』(2020年7月15日)において、いわゆる「密接」「密集」「密閉」の3密ビジネスを、ICT(情報通信技術)を活用し、「非接触」「遠隔」「超臨場」のビジネスへの転換を提唱している。

「密接」回避の非接触ビジネスモデルはキャッシュレス決済にとどまらず、飲食サービスの注文やエンターテインメント施設や宿泊施設でのチケット発券、サービスロボットによる配膳といったサービスのデジタル化を指す。

「密集」回避のビジネスモデルが「遠隔」(リモート)による技術・サービスだ。ECサイトの利用が活発だが、今後は「無人店舗」など流通・飲食・宿泊・金融のあらゆる業種で技術革新を図り適用していく。

「密閉」回避の「超臨場(メタ・リアリティ)」とは、VR(仮想現実)などの最新テクノロジーを認知科学で進化させ、臨場感を高めることだ。たとえば音楽やスポーツなどの超臨場ライブは、現場中継だけではなく応援や観客席側の臨場感を加え、リアリティを超えるリアリティを目指すべきと村上所長は同紙で提唱している。

さらにZoomなどのウェブ会議サービスは実用化が進んでいるが、まだ臨場感が不足しており、人事評価の上司と部下の2人だけの話し合いなど臨場感が伝わるように技術を進化することが可能だという。