人気企業には多くの応募者が集まり、そのなかから採用者を決めるには膨大な時間とエネルギーが必要である。しかも、それぞれの応募者についての判断を短時間で行わなければならないので間違いも発生する。必要な資源とエネルギーに見合った効果が得られているかどうかを冷静に考え直す必要がある。

第二は、自己決定へのこだわりについての反省である。現代のわれわれは、自分自身の運命にかかわる重大な決定は、他者に任せるのではなく、自分自身で行うべきだという信念を持っている。就職に関しても、かつては、他者に決めてもらうという方式があった。理科系の場合には研究室推薦があった時代がある。就職先は、教授が決めていたのである。自分が決めるのがよいか、他者に決めてもらうのがよいかの判断は、二つの要素にかかわっている。第一は、判断が間違っていたときの納得性である。自分で行った決定であれば、間違いは自己責任である。

間違いの可能性が高い不確実な選択は自分で行ったほうがいい。もう一つは、自分自身の判断力と他者の判断力のどちらが高いかである。自分自身の判断力に限界がある場合には、他者に任せることも理にかなっている。

パソナはこの方式の優位性にかなりの自信を持っているようである。この方式で来年は紹介を6000人に拡大する予定だという。私個人としては、来年もうまくいくことを祈っているが、パソナ方式の評価をするにはもう少し時間が必要かもしれない。この方式で就職を決めた人々が今後どの程度定着するかを見る必要があるからである。しかし、この方式は、採用方式を大きく変革する可能性を秘めているように私には思える。成功を祈りたい。

(平良 徹=図版作成)