富士通ばかりでなく、電機大手は激変する時代と格闘し続けてきた。表を見てもわかる通り、配転計画に名を連ねているのも多くが電機大手だ。問題は、違ったニーズに人材をどう適正に配置するかだと、山形委員長は言う。これまで培ったスキルを活かしながら、違った環境に異動させることで新たな仕事が開花すれば、社員にとっても企業にとっても幸せなことは間違いない。

今期、工場人員約90人の事業所間応援派遣を発表したのは三菱重工業。自動車関連を含む中量産部門が不振な一方、自然環境・エネルギー関連部門などの受注は好調だ。そこで、労使協議に基づいて繁閑の差がある事業所間での応援で対応するという。三菱重工労組の倉永誠史書記長は、今回の対策について、最長1年間の期間限定の応援だと前置きし、

「今回の応援派遣のみならず、関連会社や協力会社への出向などで大切なことは、単なる人的補充で終わらせないこと。課や係単位の連絡、交流を通してその後問題はないかをチェックするなど、“その後のケア”が必要」

と語る。これまでも造船不況といった苦しい時代を経験してきた中から、適切な対応を取ることを学んでいるというのだ。人員削減では100%マンパワーがなくなる、やはり雇用の確保は大前提だ。

「企業も社員もウィンウィンの関係が持てることが大切。そのためには、今まで取り組んできたことをきちんとやることが求められている」(倉永書記長)

全く違った職種に対応できない、親の介護で遠距離通勤できない、子会社出向で給与が大幅ダウンとなり生活設計が狂った――。順風満帆なサラリーマン人生の一寸先は闇のようだが、組合は可能な限り対応しているということなのだろう。

しかし、配転や異動ですべてが狂うわけではない。逆転の発想、前向きの姿勢で取り組んでいる人も数多くいる。