「現場力」だけでは変化についていけない

それでは〈軽い〉組織をつくるにはどうすればよいのか。

まずは、社内の各組織をコンパクトにすることだ。小さな組織では、情報伝達も早く、建設的な議論がしやすい。社員の顔と名前も一致しやすくなる。機動力がつき、一人一人が組織の一翼を担っているという意識が強くなり、他人事のような顔をする人が少なくなる。結果、組織内部の事情に振り回されることが減り、常に組織全体の視線が市場に向けられやすくなる。

分析からは、一つのビジネスユニットの人数はできるだけ少なくすることが望ましいといえる。大企業であっても、個々の事業を担当する組織は、可能な限り規模を抑えるべきである。

ただ、必ずしも少人数=コンパクトな組織とは限らない。人数が多くても、組織のピラミッドの形がフラットで上からの指令や情報が下に伝わる距離が短いほどコンパクトだといえる。

このテーマに限らず、ミドルクラスが経営の基本的な考え方を学んでおくことが必要だ。現場で得る知恵や経験はもちろん大切だが、それだけでは変化に対応できない。いかなる状況でも、現状を把握し、次にどんな行動をとるべきか考える力が不可欠だが、基本的な理論・論理はその土台となる。実際、ごく基本的な経営戦略の考え方を知っていたら絶対にうまくいかないとわかる方策をあえてとり、失敗する状況をしばしば見聞きする。企業経営の基本的な理論・論理を日常業務とは別に学び、仕事に生かす姿勢が日本のミドルに欠け気味であることも、組織を重くする一因であろう。

世界同時不況の影響を受けて、多くの日本企業の業績は急速に悪化したが、最新の調査でも、基本的な傾向は変わらない。外部状況が変わったからといって、組織はすぐには変わらないのだ。

的確な対応策を素早く講じることができるのは、軽い組織である。重い組織には、極めて厳しい状況でも、組織に危機感が乏しい。少数の人々がどれだけ必死で立て直そうとしても、組織全体としての行動に簡単にはつながらないのだ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=山下 諭 撮影=澁谷高晴)