日露戦争では、連合艦隊参謀として活躍します。これより前の35歳で海軍大学校の教官となった真之は、当時イギリス方式であった海軍の言葉を日本語に置き換え、自分で教本をつくり、それをもとに部下、同僚、また上司にも教えて認められていました。「海軍は一生の大道楽」とうたい、頭脳明晰にして豪快さもあり、バルチック艦隊を迎え撃つためにすべてのシミュレーションを考え抜きました。真之に対する周囲からの厚い信頼があったからこそ、日本海軍の一糸乱れぬ操船が可能となり、日本海海戦においてギリギリ以上の勝利を得られたのだと思います。

原作や史料を読みながら、真之の年表をつくり、写真を集めました。年代順にファイリングして見てみると、表情の変化が読み取れます。若い頃の希望に満ち満ちている表情。日露戦争後の憂いを隠せない顔。ドラマの最終章にはあの深みに届きたいと考えて演じています。

真之は引き締まった筋肉質の体型ながら、身長は160センチ台と小柄だった。ですが写真を見る限り、どうしても小さく感じられません。バストアップの写真が多いという理由だけでなく、子供のときから目力のインパクトが強く、顔から受ける圧力があるからだと感じます。

真之の母・貞は目がキリッとしていたので、目の鋭さは遺伝ともいえます。それに加え、子供のときから、どうも自分の居場所はここではないという違和感がどこかにあって、別の方向を探し求めているようなところがあり、自然と貪欲な目つきになったとも思うのです。

真之の生涯は、ひとつの色で塗ることができません。司馬さんも、これだけ闘争的な性格に生まれついていながら、人の死であるとか、血を見ることに誰よりも深く傷つくと書いています。