財務を理解するには決算書を読み解くというのが普通の考え方のようだ。しかし、決算書は日々の企業活動にともなって起票していく帳簿の要約でしかない。本当に財務を理解したいのなら、簿記をマスターして帳簿の行間から企業活動の実体を読めるようになりたい。

帳簿とは貸借対照表や損益計算書を作成するための元ネタである「総勘定元帳」や「仕訳帳」などのこと。企業の帳簿は単なる金銭の出納ではなく、発生原因を踏まえて記載する「複式簿記」が用いられる。現金5万円で備品を購入したら、「借方 備品 5万円」「貸方 現金 5万円」と購入と支出を紐付けて起票し、総勘定元帳に記載する。

複式簿記はヴェネツィア商人たちなどによって利用されていた。そして、イタリアの数学者であるルカ・パチョーリが1494年に著した『スムマ』で初めて学術的に簿記を説明し、広く世の中に広まった。それゆえパチョーリは、「近代会計学の父」と呼ばれることもある。

ちなみに簿記は帳簿を作成するプロセスが重要だ。その総勘定元帳から財務諸表を作成したあと、いかに企業の財務状況を正確に説明するかなど、ディスクロージャーのあり方について理論的に考察するのは会計学ないし財務諸表論の土俵といえる。

会計監査では決算書に間違いや不正がないかを確認するために帳簿を確認するが、数百、数千ページ以上に及ぶ、そのすべてを確認する「精査」ではなく、数%をサンプル調査する「試査」の手法を用いるのが現実的だ。売上高、原価、棚卸資産、借入金、現預金などから、危険な部分をピックアップして調べるのだ。統計的な手法で監査対象を抽出することも大事だが、ここは監査人である会計士の経験と勘が時としてものをいう。

帳簿と決算書の関係
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帳簿と決算書の関係

では、なぜ決算書だけでなく、帳簿を見ることが大事なのか。

借入金が20、資本金が30、売り上げが50あったとする。図のように帳簿では、それぞれ現金の入金として20、30、50と記載される。その結果、貸借対照表の現金は合計100と一括りで表示されるわけだ。

また、帳簿にある売上高の50は、損益計算書にそのまま記載される。さらに売上高が30あがれば、損益計算書では、売り上げ「50+30」で80と直される。現金については、「借入金20+資本金30+売上高50+売上高30」の合計である130へ書き換えられる。

つまり、売上高や現金の内訳は帳簿を見なければわからない。そして、それを知ることで決算書がどう組み上げられているかを理解できるようになる。

そこでオススメなのが簿記のマスターだ。簿記検定には4級からあり、ビジネスマンなら3級くらいはマスターしておくといいし、2級を持っていればかなり評価されるはずだ。

簿記検定の受験者は増加傾向にあり、2002年の簿記1~4級の受験者数は54万人弱だったが、10年は約20万人も増えて73万人弱となった。「会計本」がいくつもヒットしたことで会計が身近になったことが影響しているのかもしれない。

合格への勉強時間の目安は、2級で100時間、3級で50時間、4級では30時間程度。3級、4級は独学でも可能だろう。なかには2週間の勉強で3級に合格した人もいる。私は小・中学生を対象とした「キッズBOKI」の教室を主宰しているが、中学生が2級に合格した。

2~4級の試験は例年2月、6月、11月の3回。合格率にはばらつきがあるが、前回の3級合格率は約31%、前々回は約45%となっている。

ちなみに会計士になるための勉強は3000時間程度であり、その半分程度は簿記の勉強にあてられる。公認会計士には簿記1級を取得していない人もいるが、同程度以上の計算力は会得しているものである。