自動車業界ではガソリンから電気へのシフトが喫緊の課題になっている。だが、なかなか電気自動車は普及しない。ドイツ在住の作家・川口マーン惠美氏は「EUにおける電気自動車へのシフトは、消費者の意思も無視して進められている。特に田舎には不満を持つ人が多い」という——。

※本稿は、川口マーン惠美『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

電気自動車
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歴史を動かしたのは常に技術革命だった

電気自動車へのシフトは産業革命のようなものだ。国全体の産業構造が変化し、今まで利益を得ていた人がその利益を失う。これまで長らく続いていたヒエラルキーが崩壊する。

ただ、何らかの技術が、あるとき、唐突に新しい技術と入れ替わること自体は、別に珍しいことではない。蒸気機関車が発明されると、それまでずっと使われていた馬車が不要になり、電車ができたときは、今度は蒸気機関車が不要になった。直近では、エレクトロニクスへの転換もある。

そのたびに、大量の失業者が発生し、巷の人々は、おそらく世の中がひっくり返るほどの危機感に襲われたにちがいない。しかし、やがて、失われたと同じだけ、あるいはそれ以上の新しい雇用ができて、革命後の世界は再び普通の状態に戻っていく。だから、現在、多くの人々に不安をもたらしているガソリン車やディーゼル車から電気自動車への移行も、最終的にはそれほど問題なく終了するのかもしれない。