「空の上の結びつき」から、「地上での結びつき」へ

このような航空会社間の国際的アライアンスによるグローバル・ネットワークの構築は、航路のネットワークの拡充のみならず、予約システムの統合、共同運航による座席の効率的利用(これは国際的アライアンスによらなくとも可能であり、実際に行われている)を促進することになる。このように、航空会社間の国際的アライアンスは、利用客の利便性を高めることによって、収益拡大の源泉となりうる。

ただし、国内あるいは同地域のライバル航空会社が国際的アライアンスに加盟せず、自らの航空会社のみが独占的に国際的アライアンスに加盟した場合にのみ、このような収益拡大が実現するであろう。しかし、実際には、独占的に国際的アライアンスは構築されずに、国際的アライアンス間の競争が始まってしまう。それが、前述した3つの国際的アライアンスが世界に存在している理由である。1つの拡大しないパイ、あるいは、世界金融危機と世界同時不況で縮小したパイを、これらの3つの国際的アライアンスが食い合っているというのが、世界の航空業界の現状である。

このような収益拡大をあまり望むことのできない現在の状況で、各航空会社が利益を確保するためには、費用を削減する方法しかない。国際的アライアンスによる費用削減効果は、国際的アライアンスがいわゆるarm's length(つかず離れずの緩やかな)な「空の上の結びつき」のため、限定的とならざるをえない。各航空会社が抱える機材や従業員(パイロットやキャビン・アテンダント)の数を所与として、資本面における結びつきもなければ、費用構造を根本的に改善させることは難しいであろう。むしろ資本提携あるいは救済買収によって根本的に費用構造を改善することが必要となってくる。とりわけ、買収や合併によって、規模の経済が働くことによって、費用削減を可能とすることができる。その意味において、「空の上の結びつき」ではなく、費用構造を根本的に改善させるための各航空会社の本社レベルでの「地上での結びつき」を強めなければならない状況にある。

複数人数でスカイダイビングをするときに、パラシュートがお互いに絡まないように、arm's lengthな「空の上の結びつき」をせざるをえない。しかし、スカイダイビングでは地上に向けて落ちていくしかない。いかにソフト・ランディングするかが重要である。ソフト・ランディングした後は、「地上での結びつき」を強めて、再び、空に向かって飛び立つことが求められる。

航空会社の資本提携あるいは救済買収は、欧米ではいくつかの例がある。エールフランスとKLMの合併、デルタ航空によるノースウエスト航空の救済買収など。日本においても、「ナショナル・フラッグ」を背負ってきた日本航空が、経営再建のためにデルタ航空あるいはアメリカン航空から資本提携を受けるかどうかについて、検討が始まった。当然ながら、資本提携を受けるだけで自然に費用構造が改善することはない。資本提携を受けながらも、抜本的な費用構造の改善を図っていくことが求められよう。

(図版作成=平良 徹)