東証マザーズ上場の半導体製造装置メーカーのエフオーアイ(FOI)。開示情報の虚偽記載の疑いで、上場からわずか半年、初の決算発表を2日後に控えたタイミングで強制調査が入った。同社は2009年11月に上場。上場前に提出した有価証券届出書で売上高を水増ししていたことを認め、結局、東京証券取引所(東証)は上場廃止を決めた。

売り掛けによる取引の仕組み
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売り掛けによる取引の仕組み

記載されていた09年3月期の売上高は約118億円。しかし、実際の売り上げは2億円程度だったという。架空の取引をでっちあげ、売り上げを過大に計上していたのだ。同社の取引は海外の企業が大半で、監査が難しかったといった趣旨の報道もある。

果たして本当にそうだろうか。輸出先に出向いて販売の実態を確認することもできる。さらにいえば、そのような手間をかけずとも、決算書を見るだけで疑わしい点は見つけられたはず、というのが私の見方だ。

注目したいのは、09年3月期の売上高が約118億円あるにもかかわらず、営業キャッシュフローは35億円のマイナスとなっている点である。

営業キャッシュフローとは本業で儲けたお金のこと。これがマイナスになっている理由は、売掛金が膨大であるためだ。ある程度の売掛金があるのは珍しくないが、同社の売掛金は229億円。「229÷(118÷12)」で、月商の実に23カ月分が未回収ということになる。売上金が回収できるのが2年近く先。そんな取引があるだろうか。平均は2カ月以下だ。

設備投資が膨らんだ場合など、単年度で営業キャッシュフローがマイナスになることはある。しかし複数年にわたってマイナスが続いていることは、儲けが出ていないことを意味し、何のための企業活動なのか、といわざるをえない。営業キャッシュフローが赤字ということは経営が破綻している証拠である。

同社は10年3月期には営業キャッシュフローが黒字になるなどと説明していたようである。あくまで個人的な感想だが、これはやや「異常な状態」だ。かなり不自然で、粉飾を疑うべき典型的なケースといえる。

企業が上場する際には、監査法人か複数の公認会計士が監査を行うほか、上場の際に主幹事となる証券会社や、証券取引所(東証など)もチェックを行う。エフオーアイはこの三重のチェックをすり抜けている。上場から半年あまりの企業に強制調査が入るのは異例であり、調査を担う証券取引等監視委員会(日本版SEC)による投資家保護の姿勢はうかがえるが、むしろ、なぜ上場時に見抜けなかったのか、残念でならない。

このようなことが起きると、上場企業への信頼が薄れ、投資家は疑心暗鬼になる。正しく情報開示を行っている企業はもちろん、会計士にとっても迷惑な話だ。投資判断の基準になるべき財務諸表が信用されず、投資が手控えられるようでは、企業は成長機会を失いかねない。

虚偽記載を見抜くことなく監査報告書を作成した場合、当該監査人は、日本公認会計士協会内の監査業務審査会による独自調査の対象となる。問題があれば綱紀審査会にかけられ、監査瑕疵や手続き上の問題があったと判断されれば懲戒処分となる。業務停止は金融庁の権限だが、協会が金融庁に対して行政処分を勧告することもある。『史記』の貨殖列伝によると、富には、根源的で社会に恩恵をもたらす「本富」、本富をもとに派生・拡大することで得られる「末富」、かすめとる「姦富」がある。資源の乏しい日本は本富の追求はもちろん、加工や貿易で末富を得ながら発展してきた側面があり、そのための技術や知識を磨くべきだ。何かを偽って儲けるのは富をかすめとることにほかならないのだ。