東京・歌舞伎町のホストクラブで新型コロナウイルスへの感染が相次いでいる。そうしたホストクラブでは客の多くが風俗嬢だという。彼女たちはなぜ体を売ってまでホストに通うのか。ノンフィクション作家の中村淳彦氏が取材した——。(第2回/全3回)

※本稿は、中村淳彦『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

性産業で働く女性
写真=iStock.com/romkaz
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「風俗で稼げよ」ホストの一言で店長を辞めデリヘル嬢に

専業デリヘル嬢の舞ちゃん(仮名・23歳)は徳島県で“出稼ぎ中”だった。

出稼ぎとは東京や大阪など都市部の風俗嬢が期間を決めて地方風俗店で働くこと。また地方の風俗嬢が都市部の風俗店で働くことをいう。地方の風俗街やデリヘル、また違法風俗店は、地元の女の子だけでは人手が足りない。

スカウトマンを通じて全国から働く女性を集める。地方への出稼ぎは競争が少なくて都市部より稼げる、集中して働ける、お金を使わない、といったメリットがある。またアウェーの地で誰にもバレずに働けるという安心感もある。

「寮費の一日3000円がもったいないので待機所に泊まっています。待機室はガスが通ってなくて、お風呂はネットカフェです。風俗嬢になったのは2年前ですね。好きになったホストに『東京に来て風俗で稼げよ』って言われたから。それで東京に出てきてデリヘルで働きながら、毎月どこかしらに出稼ぎに行っています」

寮とは出稼ぎ先での寝泊まり場所で、寮に泊まるかずっと待機所にいるかを選択する。ワンルームのアパートで一日3000円が相場、10日間の滞在だと3万円かかることになる。

舞ちゃんは地方出身者で、ある都市でアパレル店の店長だった。店長職でも給与は安く、手取りで月20万円程度。3年前、友達に誘われて地元の繁華街のホストクラブに行った。華やかですごく面白かった。そして2年前、東京に旅行して歌舞伎町に行った。風林会館前で当時ホストになったばかりの翼(仮名・23歳)に声をかけられた。好きになってしまった。

「昼職のときにホストに行くようになって、風俗と掛け持ちするようになりました。地元のときはそこまでホストにハマることはなくて、給料を全部使っちゃうくらい。歌舞伎町で好きになったホストは、翼っていうんですけど、最初会ったときは新人だったんです。翼に『昼職を辞めて東京に来て風俗やって稼いでほしい』って言われて、本当に昼職を辞めて東京に来ました。東京に来てから専業でデリヘルです。ホストに行く以外は、ずっと働いています」

いま(2020年4月)は全国で非常事態宣言が出されている。徳島県も東京や大阪と同じで街は閑散とし、お客さんはまったく来ないようだ。24時間体制で待機し、1人か2人つけばいいほうだという。2週間近く待機室に24時間籠もっている状況で、誰かと話したかったのか、声は明るく言葉は流暢だった。