2010年6月2日(水)

被害者にも加害者にも!近隣トラブル、不具合

騒音・ペット・水漏れ:妻子、住まい、お金…完璧な防衛法

PRESIDENT 2009年8月3日号

著者
田中 峯子 たなか・みねこ
弁護士

港共同法律事務所主宰。中央大学法学部卒業。1975年東京弁護士会登録。著書に『住まいの法律10 0章』『建築関係紛争の法律相談』など。

弁護士 田中峯子 構成=長山清子

60デシベル以上なら「騒音訴訟」に勝てる!

図:これが「マンション・3大トラブル」解決へのカギだ!
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図:これが「マンション・3大トラブル」解決へのカギだ!

「騒音が55デシベル以下です」という謳い文句で売るマンションもあるほど、騒音に悩む人は多いものです。通常のマンションが床厚15センチ程度に対し、そこは18センチ。そんなマンションで騒音計を持って耳を澄ませたことがあります。上の人の足音や椅子を引いたりする音も聞こえる。騒音に気を配ったマンションですが、測ってみたら、45デシベルもあった。一般に裁判で騒音と認められるのは60デシベル以上。ですから集合住宅に住む以上、騒音はある程度受け入れざるをえないのです。

とはいえ分譲業者の施工が悪く、構造に欠陥があることもあります。マンションの壁は、ひとつでも穴やひび割れがあると、隣の人がまるでそこにいてしゃべっているように聞こえるものです。私が担当した案件では、調べてみたところ、隣室との間にあるコンクリートの壁が天井まで届かず、隙間があいていました。これは防火区画になっておらず、建築基準法に違反していたので、販売業者に買い戻させました。

ペットについては、最近では「可」とする新築マンションが増えています。しかし、旧来の物件では「実害のあるなしにかかわらず、規約で禁止されている場合には、それを守るべきである」というのが原則。吠えないとか、トイレの始末をしているといった事情は関係ない。迷惑に感じる人たちの権利を守らなければならない。これは判例(最高裁・1998年3月26日判決)で確立されたものです。

以前はペット可でも、規約変更でペット禁止になれば、飼っていたペットが飼えなくなることもあります(図参照)。なお、規約変更は通常、区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要とされます(区分所有法31条)。

最後に水漏れ。水漏れで困るのは、責任の所在が不明確なケースです。マンションでは、専有部分での水漏れは区分所有者の責任、共用部分では区分所有者全員の責任となります。ところが20~30年前の古いマンションには、専有部分外のところに排水管が通っていることがあるのです。

私の手がけた案件で、3階のAさんの台所の排水管が、床を通って2階のBさんの天井板の間に配管されていたことがありました(図参照)。その排水管が腐食して、排水がBさんの家に流れ落ちてしまったのです。Aさん宅専用の排水管ですからAさんの責任と考えられがちですが、Aさんが排水管を点検、修理するのは不可能です。

こうした場合、最高裁の判例(2000年3月21日判決)では、「所有者が自分で管理できない配管は共用部分であるとみなす」としています。区分所有法9条にも「建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は共用部分の設置または保存にあるものと推定する」とあります。

※すべて雑誌掲載当時

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