5月末に出版され、ベストセラーになっているノンフィクション『女帝 小池百合子』。彼女の快進撃が、虚言で塗り固められたハリボテの上に成り立っていたことを突き付ける。私たちは本書から何を学び取ることができるだろう。
記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年6月5日、東京都庁
記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年6月5日、東京都庁(写真=時事通信フォト)

長大な弔辞のよう

読了とともに、長く重いため息が出た。小池百合子という政治家に死を宣告し弔おうとする、長大な弔辞を聞かされた気分だった。

石井妙子『女帝 小池百合子』(文芸春秋)

いま、『女帝 小池百合子』(石井妙子/文藝春秋)というノンフィクションが大きな話題となっている。著者は『おそめ』で大宅壮一ノンフィクション賞などの候補となり、『原節子の真実』で新潮ドキュメント賞を受賞するなど、綿密な調査と筆力に定評のある、人気女性ノンフィクション作家。『文藝春秋』で話題となった記事をまとめたものだが、このコロナ禍で私たちはテレビ画面で小池を連日見続け、再び多少なりとも親近感を持つがゆえに、ここに書かれた「小池百合子」という人物の裏側に、少なからず裏切られ、なんだか傷つき、消耗するのである。

カバーそでには、このように書かれている。

“女性初の都知事であり、女性初の総理候補とされる小池百合子。「芦屋令嬢」、破天荒な父の存在、謎多きカイロ時代。キャスターから政治の道へ、男性社会にありながら常に「風」を巻き起こし、権力の頂点を目指す彼女。誰にも知られたくなかったその数奇な半生を、つきまとう疑惑を、百人を超える関係者の証言と三年半にわたる綿密な取材のもと描き切った。
あなたは一体、何者なのですか——”