米国政府は中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイにさらなる制裁措置を講じている。その理由は「米中対立の激化」と受け止められがちだが、5月15日の追加制裁の内容を精査すると、今回の制裁は最初から一石二鳥の効果を狙っていた。アジア連合大学院機構の魏向虹主任研究員は「米国政府はファーウェイを制裁すると同時に、日本の部品メーカと台湾の半導体ファウンドリ(TSMC)を制限することだ」という——。
2020年5月18日、中国南部広東省深圳市の華為本社で開催された「華為グローバルアナリストサミット2020」で講演する華為回転会長の郭平氏。世界中からチップ供給を遮断しようとするトランプ政権の動きに、世界の産業に混乱をもたらす「悪質な」攻撃だと非難した。
写真=AFP/時事通信フォト
2020年5月18日、中国南部広東省深圳市の華為本社で開催された「華為グローバルアナリストサミット2020」で講演する華為輪番会長の郭平氏。世界中からチップ供給を遮断しようとするトランプ政権の動きに、世界の産業に混乱をもたらす「悪質な」攻撃だと非難した。

米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月15日、中国の通信機器大手華為技術(以下、ファーウェイ)と関連企業114社への輸出管理を強化すると発表した。2019年5月15日にファーウェイとその関連企業を同省産業安全保障局の「エンティティリスト〔輸出管理規則(EAR)の一部〕に加えてからちょうど1年だ。

外国企業に輸出規制の網をかける

今回のファーウェイ制裁は米国商務省が輸出管理規則を変更した。その内容は「一般禁止事項3(外国で製造された直接製品規則)とエンティティリストの修正」と題した5月19日付の官報で公表した。規則の変更自体は5月15日から有効となる。「直接製品」とは、外国企業が国家安全保障上の理由で管理する米国の技術に基づく製品を生産する場合、その製品は米国の「直接製品」と見なされる。

今度のルール変更のポイントは、①外国企業を規制することが鮮明。②米国国家安全保障規制品目の拡大。③米国国家安全保障規制品目(技術・ソフトウエア)に基づく生産した製品をファーウェイに出荷できない。つまり、外国企業はアメリカの技術、ソフトウエアを使って作られたものを「外国製の直接製品(foreign-produced direct product)」と呼び、それをファーウェイに販売することには、米国商務省の許可が必要だ。