〔2〕資源の慎重な配分に役立つ

米景気が10年ぶりに大きく後退した2001年に、ベイン社がフォーチュン500のうち90社を対象に行った調査は、シナリオプランニングの潜在的価値を裏付けている。

「調査対象企業は景気後退を予想してはいたものの、自社製品市場の深刻な落ち込みの程度や、同業他社の対応についてはまるで予想していなかった。これらの企業は数万人のレイオフが必要になるわずか数カ月前に、数千人の従業員を新たに雇用していた」とリグビーは言う。

頑強なシナリオプランニングがあれば、このような方針転換が生み出す資源の浪費を防ぐことができたであろう。

〔3〕選択肢を蓄えることができる

シナリオプランニングの最大の弱点は未知の事態であると考えられがちだが、それこそシナリオプランニングの力が最大に発揮されるところである。未知の事態には、引き金となる事象が起こる際の複数の経路を想定しておくことで対処する。

「企業が直面する不確定要因のすべてを認識することは、柔軟性を引き出す優れた方法である」とシューメーカーは述べている。

97年の戦略計画国際会議の演説で、アリ・P・デジュスは、シナリオプランニングのこの利点について説明している。デジュスは、ロイヤル・ダッチ・シェルに38年間勤務した、最も影響力のあるシナリオプランニング創始者といわれている。

「我々は、シナリオは、通常と異なる時系列でものを考えることだと考えた。つまり、『何が起こるだろうか』と問うよりも、『こうなったら、何をすべきか』と問うほうが有益であると認識した」と彼は言う。このような「問い直し」によって、シナリオプランナーは、「頭の中で、自らの描いたシナリオの世界に入り込み、あらゆる場面の選択肢を探る。そしてそれらを頭の隅に残しておき、必要に応じてアクセスする」のだ。

ロイヤル・ダッチ・シェルの先駆的なシナリオプランニングの初期段階に参加したシューメーカーは、「石油価格暴落」という同社のシナリオが、80年代の石油価格の底入れを事前に予想したと指摘している。他の石油企業が適切な対応策をあたふた模索しているのを尻目に、シェルの首脳陣がこの問題を議論することはほとんどなかったという。本件とその影響はすでに検討済みだったからである。