「売上高は12%増」
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「売上高は12%増」

明菓、明乳の統合は、リストラとシェア拡大によって短期的に利益を拡大し、既存市場の中で生き残ろうとする統合とは真逆の統合なのだ。異なる得意技を掛け合わせて新しい市場を創造する前向きの統合、夢を膨らませる統合なのである。

世の中全体がシュリンクムードにある中、なぜ明菓と明乳がこうした“明るい統合”を志向できたのかといえば、それは一にかかって両社の企業理念にある。両社が社会に貢献するという企業理念を確固として持っていなければ、おそらくこの統合はなかった。利己より利他を志向することで市場の閉塞感を打破していこうという発想は、競争に勝つことだけが至上命題とされる世相の中で、やはり一筋の光明である。

最後に、冒頭に掲げた「仕事をおもしろくする、おもしろい仕事を創る」という言葉について考えてみたい。ビジネスマンが仕事をおもしろいと感じるときは、いったいどんな瞬間だろうか。佐藤社長はこんなことを言う。

「この統合によって、やりたいこと、やれることの可能性がどんどん膨らんでいく感じがしています。そのためのインフラ整備、基盤強化ができた。私は、経営者のメーンの仕事は目標づくりだと思っていますが、目標はやりたいこと、やれること、やるべきこと、この3つの兼ね合いだと思います。そして、みんながやりたいことを取り入れた目標をつくらないと、仕事はおもしろくならない。短期の利益を求めて点取り虫になる働き方ではなく、ぜひ、おもしろい仕事をやりながら、食品と健康のリーダーカンパニーとして世界的な有力企業に勝ち上がっていこうと。これが、今回の統合の目標です」

リストラは最短距離で利益をアップできる手法だが、誰もがやりたくない仕事の代表だろう。それが、つまらない仕事であることは言うまでもない。佐藤社長の発想は、正反対だ。社員がやりたいことができるフィールドを拡大することで、企業を活性化し成長させる。浅野社長の考え方も、基本は同じだ。

「おもしろいことを思い切ってできる社風が、異なる組織をまとめる求心力になる。そんな社風をつくり上げるのが、経営者の仕事だと思います」

取材中、自分の仕事をいかにもおもしろそうに語っていた人物の一人に、明菓・中国事業推進室長の森田洋二がいる。

「中国には04年に進出して、06年に工場を稼働させましたが、現在、上海のマーケットで第3位のポジションを獲得しています。中国の小売業界には、棚代や登録フィーなどの習慣があって営業は相当苦労していますが、日本の製品は品質がいいと認識されています。世界で唯一残された、とてもエキサイティングな市場だと私は思っています」

中国における明菓のキャッチフレーズは、「明智・選択・明治」。意訳すれば、「賢い人は明治を選ぶ」。明菓、明乳の統合が本当に賢い選択であったかどうか、答えはすぐには出ない。あくまでも、長期的に出る。(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時