「担当工程は私のほうが詳しいのですが、私が『やる必要はない』と考えていることを上司は重要視していたり、取りかかりたくてもさらに優先順位の高い仕事があったり、急に発生したトラブルの対応に追われていたり……」

要は業務の調整が全くなされないまま、さらなる要求だけが課されていったのである。

「ものすごく忙しくて疲れ切っている中で一生懸命仕事をしているのに、できない理由も聞かず、人を全く信用しないようなやり方で無理矢理働かされて、すごいストレスでした……」

業務の割り振りをめぐる混乱も起きた。01年5月の連休明け、重光さんは上司からある新製品の開発業務の資料をポンと渡され、軽い感じで「やって」と指示された。たいした説明もなかったため、まだ少人数で試作品をつくっている段階だと重光さんは思ったという。ところが、求められて会議に出席してみて、仰天してしまった。

「もう出荷のために承認を取らなければいけない大変な時期だったんです」

すでに手一杯の重光さんは新たな業務を断ったが、「M2ラインは別の人にリーダーをやってもらうから」と上司に説得され、開発業務を担当することになった。しかも製品の承認を受ける会議の提案責任者という重要な役回りで、である。

ところが重光さんはこの製品の開発に関わった経験はなく、上司から詳しい説明もなかった。他部署が関わる業務のため「どうなっているんですか?」と問い合わせが次々に来たが、上司は「担当の重光さんに聞いて」と丸投げするだけだったという。