縮小するマーケットで成長するには、シェアを上げるしかない。そのためのポイントは、システムと人材育成だという。

06年に、損保業界は保険金の不払い問題で、多くの会社が金融庁から業務停止命令を受け、消費者の信頼を失った。保険料収入を増やすために、主契約に特約をつけすぎ、契約が複雑になりすぎたことにも原因があった。

「保険商品はますます簡単なものになっていき、一言でいえば、コモディティ化していく。そうなれば当然価格競争にさらされる。このゲームのルールから逃れられないのであれば、いかに原価を安く抑えるかということに尽きる」

もう1つ、成長するところに出ていくことだ。行き先は、やはり海外。これは3メガ損保とも共通している。海外展開に出遅れたのではないかという声もあがる。「私たちは慎重だっただけ。今後は一気にいくところはいく」と、負けん気を隠さない。実際、この6月には、約280億円を投じて、トルコの保険会社買収を決めた。海外展開は、3メガそれぞれに特徴があり、その成否が明らかになるのは、これからだ。

櫻田の言葉を借りれば、狭義の先にあるのは、“広義”の成長戦略である。それは金融サービス業への脱皮だ。「大げさかもしれませんが、10年たったら損保ジャパングループって、昔は保険会社だったらしいね、といわれるようになれば、これは勝ちだと思っています」。金融商品、金融サービスは差別化が難しい。保険に限らず日本の金融グループでサービス業への転換に成功しているところはない。人の意識を変え、文化を変えるためには、いまからはじめておかなければいけないと思い定めての発言だ。

このような成否がわからない夢を堂々と口にするところに、櫻田の気概が感じられる。櫻田はその解をやはり現場に見出すのだろうか。(文中敬称略)

(門間新弥=撮影)