無駄な報告をダラダラ行うような会議はもちろんやめたほうがいい。しかし、会議は組織を効率良く動かすための「交通整理」として欠くことのできないものです。会議で決めるべきことをきちんと決めたほうが、仕事の効率は確実に上がります。

<strong>三菱ケミカルホールディングス社長 小林喜光</strong>●1971年、東京大学大学院相関理化学修士課程修了後ヘブライ大学物理化学科、ピサ大学化学科留学。74年、三菱化成工業(現三菱化学)入社。2003年三菱化学執行役員、06年三菱ケミカルホールディングス取締役、07年社長。
三菱ケミカルホールディングス社長 小林喜光●1971年、東京大学大学院相関理化学修士課程修了後ヘブライ大学物理化学科、ピサ大学化学科留学。74年、三菱化成工業(現三菱化学)入社。2003年三菱化学執行役員、06年三菱ケミカルホールディングス取締役、07年社長。

では会議で決めるべきこととは何か?

私は、Due dateとResponsible pers onだと考えています。重要なアイテムを抽出して、それについて「いつまでに」「誰が責任を持ち」仕上げるか。これが会議の要諦です。何を、誰が、いつまでにやるのか。これが抜けている会議は「ダメな会議」です。経営会議、個別事業に関する会議などCEOとして私が出席する会議にはさまざまなレイヤー(階層)のものがありますが、どんな会議であれ基本はこれに尽きます。

次に大切になってくるのは、会議で決定したことの進捗状況をきちんとモニタリングして、それをまた現場にフィードバックすること。そのためには的確なタイミングでフォローの会議を設定することが必要で、その意味では会議を運営する事務局の能力も問われます。

私は、会議では思ったことを率直に遠慮なく発言するようにしています。厳しい指摘も怒りの言葉もズバズバ口にします。CEOとしては会議を通して理念や指針を示し、意識の共有化を図ることも大切。そのためにも、遠慮なく私の思いを伝えるようにしているのです。

だから、経営マターを討議する会議では、ひたすら怒ることになる。とくに発言に意識のズレや甘さを発見したときは許さんし、逃さん。たとえば何年間も赤字なのに黒字にする努力計画や意欲も示さないまま、「こういう状況なので、予測では今後もこの程度になるでしょう」などと平気な顔でプレゼンする事業部長クラスにはガツンとやります。「もう1回、頭に汗かいて出直してこいッ」と。

いま三菱ケミカルホールディングスは生き残るために「崖っぷち感覚」を持って、変わらなければならない時期。上のほうの人間が変わらないかぎり全体は変わりません。ぬるま湯に浸かっているカエルは徐々に水温が上がっても感じないで、気づいたときには茹でガエルになってしまう。そうなってはならないのです。「会社を変えるのだ」というメッセージをこめて、私は社長室にカエルを飼っています。

現在、当社グループにはエネルギーを注ぐべき4つの課題があります。(1)赤字の石油化学部門の構造改革、(2)現在の成長事業の中での優先順位付け、(3)未来のための新規事業の創出・育成(白色LED、電気自動車搭載のリチウムイオン電池材料、植物由来原料のプラスチック、有機太陽電池等々)、(4)時間を節約するためのM&A。

どの課題に関する会議かで、その進め方もおのずと異なってきますが、どんな会議であれ、「何を」「誰が」「いつまでに」という基本は変わりません。

事業部長等の中には重要会議の前に私に事前説明に来る者もいます。いわゆる根回し。私はそのときはあまり口を挿みません。だから、プレゼンする側は「どうやらこれでオーケーなのだろう」と安心し、本番でも同じような調子で発言する。それに対してガツンとやるので、怒られたほうは驚きでしょう。