この点において、日本コムシスでは、次のような独自の手法を取っている。

(1)入退出システムによる個人在席確認

入退出時のセキュリティ・チェックとして使用しているIDカードを活用し、自動的にオンライン上のメンバー表およびレイアウト表で入退出状態が記録され、在席確認と、どの席に座っているかがわかる。

(2)IP電話(携帯電話)を使用

携帯電話が個人ごとに支給され、話したい相手といつでもダイレクトに電話がつながる。外出先でも、携帯電話からイントラネットのスケジュール管理表に修正を加えることができる。

(3)カメラによる社内の情景共有

16台のカメラを設置し、フロアの様子が10秒ごとに静止画でオンライン上にアップされる。話したい相手がいまどのような状況か、事前に画面上で確認できるので無駄な動きが減る。

(4)個人のホームページを公開

全員が自分のホームページを持ち、自己紹介、経歴、趣味、書庫(過去に作成した資料等の一覧)などその人物に関する情報を公開している。必要な情報や知を持つ個にたどりつきやすい。

(5)資料をオンライン上に格納

企画書、議事録等の資料をすべて電子化し、事業部内の誰もがいつでもどこでも必要な情報を取り出せる状態にしておく。資料には作成者名が掲載されており、疑問点や相談したい点を直接担当者に聞ける仕組みとなっている。

(6)画像転送システムの活用

携帯電話で写真を撮ると、それが自動的にオンラインにアップされる仕組みがあり、顧客先の状況等、離れた場所からオンタイムに伝えたい相手に状況を知らせることができる。

日本コムシスでは、このワークスタイルを取り入れるようになって、営業とソリューション部隊とのコミュニケーションが活発になり、部署をクロスする新規プロジェクトが次々に生まれるようになるなど、ほかのグループを巻き込んで仕事するスタイルが日常化した。資料は打ち合わせしながらその場で作成・修正するようになり、顧客からの課題に答えるまでの時間が短くなった、などの成果が表れている。

これまで、オフィスのIT化は、無駄なコミュニケーションを省略することが目的とされていた。ところが日本コムシスのワークスタイルはその対極で、IT化を進めれば進めるほど、人と人のコミュニケーションが密になっていく。この仕組みの導入に成功すれば、知をビジネスに変える最強のインフラとなると大島助教授は予測する。