年収の多いサラリーマンほど収入の落差がつらい

少々暗い気分になった人もいるかもしれないが、実際には育ち盛りの子どもがいても、これぐらいの予算できちんと切り盛りしている家庭は多い。そんな上手な家計管理をずっと続けてきた家庭なら、年金生活にもスムーズに移行することができる。

問題は、年収が多いことに安心して、あまり悩まず生活費を使ってきた家庭だ。特に、年収が800万円以上あるのに貯金がほとんどない、といった場合は危険度が高い。家計管理が身についていないから、年金生活になったときに収入の落差に苦しむことになる。

年収が高いサラリーマンは、厚生年金保険料を毎月多く払っている。このため受給額も高くなるが、公的年金には上限があって月額で28万円程度が限界。年収が高い人ほど、収入落差が激しくなるわけだ。とはいえ、生活レベルを急に下げるのは難しい。高収入のサラリーマンこそ、心して早めに老後生活に向けて準備を進めておかなくてはならない、ということだ。

ところで、前ページの表に「住居費」の項目がないことに気づかれただろうか。実は、この予算では住居は持ち家で住宅ローンがないことを前提としている。固定資産税など毎年かかる経費は、預貯金から支払う想定だ。年金生活で住居費を負担するのは厳しい。住宅ローンは現役のうちに繰り上げ返済し、残債があれば退職金で支払っておこう。賃貸の場合は、生活費をもっと切り詰めることになるが、現役時代と同レベルの家賃を払い続けるのは難しいだろう。賃貸派は、老後の住まいをどうするか十分に検討しておきたい。

(取材・文=有山典子)