社内会議での配付、「サイト記事」のメール送信もダメ

図1:法律の「建前」ではほとんどが違法
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図1:法律の「建前」ではほとんどが違法

新聞や雑誌の記事、書籍の一部などをコピーして社内の会議で配ったり、ウェブサイトの記事を社内メールで送ったりすることは日常的にあるはずです。法的には、これらの行為は著作権侵害となります。この場合、著作権法の例外は、個人での私的使用と公的図書館での複写。これ以外は原則として、著作権者の承諾が必要になります。

記事の要約も著作権侵害となる場合があります。もとの文書を読まずとも内容がわかるような要約は、著作権法上の翻案に当たる場合があり、著作権者の承諾が必要です(著作権法27条)。また、記事の「見出し」は著作物として認められていませんが、営利のために転用などをした場合には「法的保護に値する利益を侵害した」として、不法行為(民法709条)になるとの見解が示されています(2005年10月・知財高裁)。

著作権の理解が難しいのは、法律の建前と現実社会での運用が大きくズレているからでしょう。著作権者としては、紙面に「すかし」を入れたり、パソコンでの「コピー&ペースト」をできなくするなどの対策を講じれば、著作権を守れます。ただし、それでは逆に利用が滞り、著作物が流通しないという弊害もある、といえるのです。

著作物の一部が違法コピーされた場合、一般的に損害賠償額は全体からの案分で算定されます。

図2:賠償金額が小額で裁判は割に合わない
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図2:賠償金額が小額で裁判は割に合わない

たとえばプレジデント誌に掲載された4ページ分の記事を1000部複写して配布したとします。売価650円、全体で150ページ、印税率が10%だとすると、記事の執筆者などの著作権者が原告の場合、請求額は「650円÷150ページ×4ページ×10%×1000部=1733円」となります(著作権法114条3項)。出版権を持つ版元が原告の場合、請求額は「650円÷150ページ×4ページ×1000部=1万7333円」となりますが、この場合は、「配布された分だけ売れた」ことを立証する必要があります(同法114条1項)。そのため、裁判では「違法コピーがなければ1000部売れた」と主張することになりますが、複写が無料配布されていた場合、そうした主張はなかなか通りにくいことになります。

現在、著作権侵害が野放しになっているわけではありません。営利目的で記事を盗用するなどの悪質なケースでは、刑事事件になることもあります。2009年5月には、自分のブログに他人のサイトの文章を無断で掲載していたとして、大阪府の男性が著作権法違反の疑いで逮捕されました。このブログでは、著作権者の度重なる警告を無視したうえで、健康食品の通信販売サイトを紹介し仲介料を稼いでいたということです。

ビジネスの現場で、著作権法を形式的に適用する場合にこれを完全に遵守できるとは、私には思えません。ただし、著作権者への敬意と配慮は重要です。侵害を最小限にとどめる努力は必要でしょう。

※すべて雑誌掲載当時