今年1月放送のNHKスペシャル「無縁社会“無縁死”3万2千人の衝撃」は大きな反響を呼び、菊池寛賞を受賞した。同番組が報じた「身元不明の自殺」「行き倒れ」、死後に部屋で発見される単身者の孤独死などの件数は今後も増えていくと予想されているが、日本社会はいまだ、無縁死・孤独死を防ぐ有効なセーフティーネットを持たない。

12月3日、東京都内で「最期まで安心して暮らすための応援団」を理念とする「トータルライフサポート」(三国浩晃理事長)というNPOが発足した。健康・介護・遺言・相続・葬儀・ターミナルケア・グリーフサポートなど各分野の専門家で構成され、24時間体制の電話相談による孤独死防止のライフラインづくりを目指す。

設立式典では『おひとりさまの老後』の著者、上野千鶴子・東大大学院教授が講演。生涯非婚者や、妻・夫に先立たれた「おひとりさま」が増加している実態などが説明された。

上野氏は「おひとりさまには『孤立したおひとりさま』と『孤立していないおひとりさま』の2種類がある」とし、「孤立したおひとりさま」の孤独死を防ぐには、当事者である「おひとりさま」を中核に据え、その要望に沿う形でケアマネージャーやヘルパー、医師、税理士、葬儀業者、友人、宗教者などの専門家が集団でサポートするシステムが必要だと指摘した。上野氏自身はNPOの理事でも何でもない完全な第三者で「NPOが実績を挙げられるか監視したい」との辛口コメントで場内を沸かせた。

三国理事長に設立の経緯を聞いた。

「私はお葬式の電話相談業務を続けてきましたが“身寄りのない人が亡くなった”という孤独死のご相談がこの3年間で約10倍に急増しました。電話の主の多くは他人ではなく故人の甥、姪など。生前は故人と連絡や行き来が途絶えていて“お葬式はしない”“立ち会いもしない”“お骨もいらない”というケースがほとんど。NPOを立ち上げたのは、一人で老後をえる人が確実に増えていく中、孤独死を防ぐためには、健康や医療、介護など様々な専門家が高齢者の相談を受けサポートする組織が必要だと考えたからです」

運営は会費制(入会費個人1000円、法人3000円、年会費個人3000円、法人2万円)。試行錯誤も予想されるが、先進的な取り組みとして注目したい。