合う・合わないを直感的に見破る「プロのワザ」

海老原嗣生氏

この連載の第1回と2回にでてきた、「虚無のサイクル」を脱した慶大生の後日談です。

リクルートエージェントの転職アドバイザーに、この「縁の下の力持ち」タイプの学生と面談をしてもらい、彼に「どんな企業が合っているか」を聞いてみました。すると、そのアドバイザーはこう言いました。

「大手メーカー、システム開発、それから、大手医療・医薬品」

前の二者は私と同じ見立てでしたが、最後の医薬・医療品は私も気づきませんでした。

MR(医薬・医療機器営業)は、同じ営業でも、一攫千金のバクチ的な仕事ではなく、コツコツと信頼を積み重ねるような仕事です。その相手も、開業医や大病院など、ともすると気むずかしい人たちが多い分野ともいえます。時には、手術の立ち会いなども求められるような、道理では通じない「義理人情」が幅を利かす世界であることは間違いありません。まさに、彼の人柄が生きる! さすが、現役バリバリの転職アドバイザー、と感心しました。

しかし、こうしたエピソードを語ると、多くの学生や大学のキャリアセンターの人からは往々にしてこんなふうに言われます。

「それは、いろいろな企業や転職者を肌で知るリクルートの人だからできることで、学生や大学の職員には無理ですよ」

これがまた、大きな誤解なのですね。

じつは、私たち人材ビジネスに携わる人間でも、余すところなく全ての業界、多くの企業を知っているわけではありません。けれど、知らない業界・知らない企業に行っても、大体予想が付けられます。そこにはあるワザがあるのです。このコツさえ身に付ければ、知らない業界・知らない企業でも怖くありません。

この章では、このコツについて、詳しく話していくことにしましょう。