管理職は、何をすればよいか。

まず、評価基準を勤務時間ではなく、時間あたりの労働生産性に置くことである。こうした対立が表面化しやすいのは、長時間労働が常態化した職場であることが多いからだ。子供のいない女性や育児が終わった女性が、育児休業や時短勤務のしわ寄せが自分たちにくるという不満を持つのも、背景に長時間労働を強いられているという思いがある。

これは私の信念でもあるが、本来評価されるべきは労働生産性であって、勤務時間の長さではない。管理職は労働生産性を重視する意識を職場に徹底させ、仕事の割り振りを見直し、残業の削減、年休取得の実現に取り組むべきだ。また、育児休業や時短勤務のしわ寄せが周囲に及ばないように代替要員の配置や担当業務の見直しを考えることも必要だ。

男性社員に育児支援策の利用を促進する方法も有効だ。そうすることで仕事と育児の両立という課題が女性に固有の問題ではなくなる。女対女という対立図式が薄れていくことになるだろう。

管理職の仕事は女性の目線を上げさせること
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管理職の仕事は女性の目線を上げさせること

同時に管理職は、育児中の女性に対して、自分をサポートしてくれる周囲の社員に感謝の気持ちを伝えるよう指導する必要がある。それから、安易に子育て支援に寄りかからずに仕事にしっかり軸足を置いた生活スタイルをつくるよう意識づけることだ。企業の子育て支援策は、本来、最終的なセーフティーネットであるはずだ。私が2人の子供を育てていたころ、自分の給料を全部使うつもりでお手伝いさんを雇ったり、ベビーシッターを雇ったりして仕事と両立した時期があった。これを今の子育て世代にやれとは言わないが、家族の協力や社会的・商業的サービスを利用したうえでどうしても無理があるときに育児支援策に頼るというくらいの心意気でいたほうが、周囲の理解を得やすいだろう。

また時間の融通がきかなくても、そのなかで最大限に努力をして成果を上げる意識を持たせることも重要だ。周囲もそれだけの覚悟を持ってモラール高く頑張っている人を受け止めようとするはずだ。

そのようなこまやかなフォローをしつつ、「自分たちのチームは組織としてのミッションをどう果たしていくか」ビジョンを語り、目線を高いところに置くように促す。高い共有目標に向かって走っている組織では、感情的な衝突が起こりにくく、大きな問題にはならないことが多いのである。

※すべて雑誌掲載当時

(山田清機=構成 川本聖哉=撮影)