内需安定株の共通する特徴とは

これからの内需安定株はこう変わる!
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これからの内需安定株はこう変わる!

相場低迷時は内需関連のディフェンシブ銘柄を狙え――。これは株式投資の定石だが、ここにきて事情が変わりつつある。

ディフェンシブ銘柄とは、業績が景気の影響を受けにくい銘柄を指す。業種的には食品・医薬品・鉄道・電力・ガス株などがこれに該当する。実際、過去の歴史を見ると、相場全体が下落傾向にあるなかで、こうした銘柄は逆に株価が上昇していることが少なくない。

相場が悪いときも簡単には資金を引き揚げられない機関投資家は、損失を少しでも減らしたいという意識からディフェンシブ銘柄に投資する傾向が強い。個人投資家にとっては、配当や株主優待が充実している企業が多いことも魅力となっている。

ところが、現在の景気悪化と株式市場の低迷のなかでは、これらの内需株のすべてが買われているわけではない。例えば東京電力株の場合、2008年10月のリーマンショック時に2215円の安値をつけ、年明けに3000円台に回復したが、その後は下落トレンド入り。現在は再び2300円台にある。

武田薬品工業の先の高値は、08年8月の6180円で、その後は下落。3月の安値3180円からは戻したものの、4月半ば時点で3600円近辺だ。

内需関連なのに、なぜこれらの銘柄は買われないのか。

医薬品の場合は、海外展開を積極的に進めたことが裏目に出た。武田薬品の収益に占める海外比率は37%。第一三共は30%。アステラス製薬に至っては45%となっている。世界的な景気の落ち込みに加え、円高が収益を圧迫していることが、株価を押し下げる要因となった。一方の電力株は、景気低迷で工場など事業用の電力需要が大きく落ち込んだことが、投資家に嫌気されている。

では、相場低迷時は内需のディフェンシブ株というセオリーが完全に崩れたかといえば、それも違う。例えば、医療事務と介護事業大手のニチイ学館株だ。昨年10月に400円を割り込んだが、その後は上昇。3月後半には900円の高値をつけた。安値圏で買っていれば、半年で2倍以上の利益を得た計算だ。

同様に道路工事大手のNIPPOコーポレーションは、昨年10月の安値470円をボトムに843円まで7割を超える値上がり。餃子の王将チェーンを運営する王将フードサービスも、底値の1100円から今年1月には1600円を超す高値をつけている。

事業内容が景気変動の影響を受けにくい

事業内容が景気変動の影響を受けにくい

これらの銘柄には共通する特徴がある。

第一に事業エリアが国内に限定されることだ。このため、海外の景気動向や、為替の影響が軽微で、まさに伝統的な内需安定株だ。第二に安易な多角化に走らず、本業をメーンにしている。選択と集中は景気低迷時のキーワードだが、その点も投資家の支持を得やすい。

第三に、長期的な社会の変化や国策に沿っていることも見逃せない。ニチイは介護事業が社会の高齢化で拡大している。雇用対策の一環で、国が介護報酬を引き上げたことも追い風だ。NIPPOは景気刺激のための公共事業の拡大路線に乗った。王将は低価格志向に合致し、また豊富なメニューを揃えるなど消費の多様化に対応して、売り上げを安定的に伸ばしている。

内需安定株の過去の不況時の値動きを参考にすることは大切だが、より必要なことは、各銘柄の今の姿を精査することである。

(平原 悟=構成 坂本道浩=撮影)