サッカーW杯の開幕まで2カ月を切った。世界最大のスポーツの祭典はビジネスの場でもある。本書はコマーシャリズムと無縁だった時代から巨大な規模になるまでの、サッカービジネスを描いたノンフィクションだ。

<strong>田崎健太</strong>●たざき・けんた 1968年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業。週刊誌編集者を経て、フリーに。スポーツを中心に人物ノンフィクションを手がけ、雑誌、テレビ、ラジオで幅広く活躍する。著書に『楽天が巨人に勝つ日』などがある。
田崎健太●たざき・けんた 1968年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業。週刊誌編集者を経て、フリーに。スポーツを中心に人物ノンフィクションを手がけ、雑誌、テレビ、ラジオで幅広く活躍する。著書に『楽天が巨人に勝つ日』などがある。

登場人物は舞台裏の大物たちだ。アベランジェ(FIFA・国際サッカー連盟)、ホルスト・ダスラー(アディダス)、高橋治之(電通)、川淵三郎(JFA)……。物語は1995年、雑誌編集者だった筆者が1分間という条件のもとブラジルでアベランジェを取材する場面から始まる。

「アベランジェについてわかっていたのは世界のサッカー界で最も力を持っている人物、ということだけ。彼の印象は20世紀スポーツ界の怪人です。彼との取材で本当の大物に相対する際の心構えを学びました」

74年にアベランジェが会長に就任すると、FIFAはアディダスやコカ・コーラと手を組み商業化の流れを加速させる。このとき、国際サッカーマーケットに参入したのが電通、そして中心的役割を担ったのが電通の高橋治之である。高橋は日本ではマイナー競技だったサッカーを巧みな手法で興行的成功に導き、その後、世界に乗り出していく。高橋の卓越した戦略性と行動力は、あらゆるビジネスパーソンの参考になるだろう。

「高橋さんの一番の魅力はビビらないところです。相手がアベランジェでも臆することがない。年齢や立場にとらわれず自らを表現するから大物たちに認められるのです。日本で生意気だと言われるくらいでないと世界ではやっていけない。こういう人が次々に出てこないと、日本のサッカー界、ビジネス界は厳しくなっていくと思います」

読者が親近感を持つのは、日韓W杯を巡る駆け引きだろう。日本の単独開催がほぼ決定していた2002年W杯。それが韓国との共催に傾いていく過程が詳細に描かれている。日本が現在、2018年、22年のW杯開催に名乗りを挙げていることを考えればさらに興味深い。

「W杯招致もビジネスも、最後は個人の“顔”がモノを言う。日本は個人の顔が見えない。最近その傾向が強まっていることを心配しています。日本の招致活動は応援したいですね。W杯は国を活気づけることができる。日本が弱っている今こそ、開催する意味は大きいと思います」世界一愛されるスポーツは深い光と闇を孕む。4年に一度のW杯を楽しむためにも、本書でその奥深さに引き込まれてみてはいかがだろう。

※すべて雑誌掲載当時