日本の原子力施設の中で、今までに脚光を浴びたものの一つに高速増殖炉「もんじゅ」がある。

トラブル続きの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。(PANA=写真)

トラブル続きの高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。(PANA=写真)

高速増殖炉とは、単純化していえば、消費した以上の燃料(プルトニウム)を生み出すことができる原子炉のこと。かつては「夢の原子炉」と期待されていた。最近では、昨年中国が臨界実験に成功したが、運転中の実証炉は現在では皆無である。

高速増殖炉は福島第1原発のような「軽水炉」ではない。後者が冷却材に軽水(普通の純水)を利用するのに対し、前者は液体ナトリウムなどの溶融金属を利用する。

弱点は、この液体ナトリウムの制御が難しいことだ。1995年12月、もんじゅはナトリウム漏洩火災事故が発生して運転を休止。その後2011年春の発電を目指し、10年5月に運転を再開したものの、同8月には炉内中継装置が原子炉容器内に落下するという事故を起こした。落下した中継装置とは、燃料棒を交換するために必要なもので、中継装置がなければ発電できないだけでなく、運転を休止することもできない。引き揚げ作業はこれまですべて失敗。今後は数十億の保全費と別に、装置回収に使う器具等の製造に伴い、さらに約17億円かかるという。総額2兆円以上をつぎ込んだ「夢の原子炉」は「危険な超・粗大ごみ」と化す可能性も出てきた。

震災により制御不能に陥った原発のほかに、国内にはもっと危険な施設が存在する。原発だけでなく、こうした他の原子力関連施設の再点検も不可欠である。

(PANA=写真)