タワマンになるはずだった選手村の行方

東京五輪の1年延期が正式に決まった。感染の蔓延が続きいまだ終息の兆しが見えないコロナ禍の現状を鑑みれば延期はやむなしの選択であることは言うまでもない。それどころか来年7月23日に確実に開催される見通しすら現時点では立っていないというのが正直なところだ。

五輪の延期で騒がれ始めたのが中央区晴海に建設された五輪選手村を五輪終了後にマンションに改装、最終的には賃貸1487戸、分譲住宅4145戸の新しい街が誕生するはずだった「HARUMI FLAG」の行く末である。昨年5月から始まった住宅分譲はすでに900戸あまりの住戸で契約を締結しているという。入居開始予定日は2023年3月であるが、五輪開催の延期は、終了後の建物内の改装、竣工、引き渡しのスケジュールに当然影響を与えることになる。仮に入居開始も1年程度遅れることになれば、すでに契約している顧客からのクレームの殺到は必至であろう。

晴海埠頭で建設が進み、完成が近い2020年東京五輪・パラリンピックの選手村=2019年11月13日、東京都中央区[時事通信社ヘリより]
写真=時事通信フォト
晴海埠頭で建設が進み、完成が近い2020年東京五輪・パラリンピックの選手村=2019年11月13日、東京都中央区[時事通信社ヘリより]

実需として購入した顧客はこれからの人生で起こる様々な出来事を想定して動いている。子どもの進入学、勤め先の都合、そして何よりも人生を賭して買うことから組む住宅ローンの金利は建物引き渡し時点での金利が適用されるため、入居開始の遅れは多くの不都合を生み出すのである。