現在は、お客さんが商品やサービスを選ぶ時代です。そして、お客さんは企業規模が大きいからといって、また店舗数が多いからといって、その企業の商品を買おうとは思いません。客のための商品をつくっているかどうかを厳しく見ている。例えばユニクロのヒートテックは安いから売れているわけではない。ヒートテックは今までにはなかった機能をつけ加えたから売れたのです。顧客価値を考えた商品と言える。一方で『企業価値の向上だ』と株主ばかりを見て、顧客のことをあまり考えてこなかった企業はお客さんから選ばれません。

では、顧客価値の高い商品はどうやって開発すればいいのか。それは経営者が『会社の持っているリソース』を顧客価値の高い商品に転換できるかどうかにかかっている。1997年、スティーブ・ジョブズは業績不振に陥っていたアップルに暫定CEOとして戻るのですが、そのとき、社内には100のプロジェクトが進行していた。ジョブズは部下を呼んで、すべてのプロジェクトを聞き取りました。視点は『それは顧客にとって利益のある商品かどうか』。そして、唯一残ったのがiMACの開発だった……。

私はどこの会社にも顧客価値を考えた商品がひとつやふたつは眠っていると思う。それを経営者がピックアップして、そこに会社の力をすべて投入するかどうかなんです。そうすれば顧客の心をつかむ商品ができる。お客さんの心をつかむことさえできれば売るのは楽です。

うちでは4月から組織改革をします。階層をなくし、ピラミッド型組織を廃止。事業部の壁を取り払って、全社のリソースを見つけやすくする。顧客価値のある商品を見つける体制に組み直しました」

今なぜ洋画より邦画のほうがウケるのか

CCCが元気がいいのは、顧客価値の高い商品がいくつもあるからなのか。

「うちは企画会社です。レンタルや本の販売をやっているのはTSUTAYAで、そこには各オーナーがいます。CCCは企画会社ですから企画を出すことで世の中に貢献したい。例えばTカード、そしてそこに付随するTポイントといった企画がそうです。Tカードは単なるレンタルDVDの会員証ではありません。TSUTAYAに限らず、すかいらーく、ファミリーマートといった約50社の提携先でもポイントカードとして使えます。使用できる店舗数は全国で約3万店。現在、3000万人のお客さまがTカードを持っています(うちクレジット機能付きは517万人)。