たとえ失敗しても、社会は手を差し伸べてくれる

<strong>堀 義人●ほり・よしと</strong> 1962年生まれ。京都大学工学部卒。住友商事在職中にMBAを取得。92年独立。グロービス経営大学院は株式会社立大学として2006年に開学、08年学校法人に転換した。
堀 義人●ほり・よしと 1962年生まれ。京都大学工学部卒。住友商事在職中にMBAを取得。92年独立。グロービス経営大学院は株式会社立大学として2006年に開学、08年学校法人に転換した。

きわめてストレートな書名である。「創造と変革の志士」とは、グロービス経営大学院が育成を目指す人材像。学長である堀義人さんがイメージするのは、明治維新を担った「勤皇の志士」だ。

「現代に置き換えると、リスクを負って新ビジネスの創造や社会の変革に挑戦することのできる、勇気と高い志を持った侍のような人。もちろん侍といっても男女を問いません。最近の経営者でいえば宅急便をつくった小倉昌男さん(元ヤマト運輸社長=故人)です。小倉さんは、まったく新しいビジネスをゼロ・ベースからつくりあげた抜群の能力と、官僚機構など理不尽を押し付けるものとは徹底的に戦う正義感、そして一社の利益より公共の利益を優先する志操の高さを持っていました」

水戸城址にある学校で教育を受け「水戸学の発祥の地の空気を吸いながら育った」と書くだけに、堀さんの言葉は論理的であるうえ非常に熱い。一義的には「志士」となるための能力開発や志の持ち方を説く理念の書だが、著者自身のエピソードもふんだんに顔を出す。

エリート商社マンだった堀さんは、80万円の資本をもとに「アジア・ナンバーワンのビジネス・スクール」を目指して小さな教室を開くが、一歩を踏み出すまでは躊躇、逡巡の日々だった。会社の借金に個人保証を求められる日本の中小企業経営者は、一度失敗したら破産する以外に道がない。「敗者復活ができないとなると、せっかく培ってきた京大、ハーバードなどの学歴や、住友商事の職歴を無にしてしまう」と考えたからだ。

しかし数々の失敗事例を調べるうちに、日本社会は「敗者に厳しい」のではなく「プロセスにおいて不正なことをした人に厳しい」だけではないかと思うようになる。「礼儀を欠かさず、自分の考えていることを謙虚に伝え、決して華美な言動をしない(中略)。そうすれば、たとえ失敗しても、社会は手を差し伸べてくれるだろう」と。

分析が当たっているかどうかは問題ではない。こう考えることで、著者は腹をくくることができたのである。直後には「言い換えれば、そのような良い社会であると信じようと思った」という一文が続く。

人間にとっていちばん大事な徳目は何だろう。私は勇気だと考える。著者はこのとき、大商社というぬくぬくした居場所から、勇気を奮って飛び出すことができたのだ。

堀さんは本書で「頭の中の発想を現実の社会で具現化するためには、強い使命感と志を持ち、多くの仲間を募りながら、勇気を持って行動することが肝要となる」と説く。まるで「俺に続け!」というように。