インドや中国は、アメリカの脅威になるでしょうか。サハラ・チャブラ(ダラス)


 

アメリカ経済は中国経済の約5倍、インド経済の15倍近い規模ですが、アメリカの人口はこれらの国の約4分の1にすぎません。これはとりもなおさず、教育や医療や安全保障の提供という点で、また国の繁栄につながる他のすべての事柄で、アメリカが真の優位を保持できるということです。

しかし、単純計算でいくと、中国とインドは、アメリカより成長率が高いわけですから、いずれはアメリカに追いつくということになります。中国については、その日が訪れるのは2045年、インドについては、その20年ほど後ということになります。

しかし私は、その日はそれほど早くは訪れないと思います。アメリカ、中国、インドについてのこの試算は、あくまでも単純計算にすぎません。この計算では、3カ国とも右肩上がりの成長を続けると想定されています。しかし、現実には、そんなことはありえない。

共産主義と資本主義を合体させるという中国の大規模な実験、インドの根深い官僚主義と腐敗、そしてアメリカの長期にわたる社会保障負担を考えると、成長の軌道は右肩上がりよりもジグザグになる可能性のほうがはるかに高いはずです。

そうした現実を考慮すると、この先50年の流れとして、どのようなシナリオが最も可能性が高いと思われますか。アメリカの年率3%の成長でしょうか、それとも中国とインドの8%の成長でしょうか。私は前者をとります。

肝心なのは、アメリカが国としてどのように動いているかという点です。私が申し上げているのは、主として「自由と安定」のことです。

アメリカの政党は激しく対立はしても、政府が機能を停止することはありません。司法制度は概して公正です。医療は、成果にバラつきはありますが、広く利用できます。また、中等教育には問題があるとしても、高等教育は世界最高であり、世界で最も優秀な科学博士や工学博士を輩出しています。

アメリカにはもう一つ、他に類のない強力な競争優位があります。優秀で意欲に満ちた大勢の起業家と、潤沢な資金を持つ熱意ある投資家です。たしかに、中国やインドにも起業を夢見る野心的な人々はいますし、その夢を実現する人も次第に増えてきています。しかし、この「キラー・アプリケーション」に関しては、中国もインドもアメリカの足元にも及びません。

中国は、リスクの高い社会的実験を別にしても、中国経済に真の意味で参加しているのは国民の4分1弱にすぎません。人口の急激な高齢化は、一人っ子政策のためにさらに進んでいます。一方、インドは、持たざる者が圧倒的多数であることと、前述の腐敗の問題に引き続き悩まされるでしょう。

アメリカのシステムは完璧だとか、アメリカ経済は無敵だとか言うつもりはありませんが、アメリカの経済的リーダーシップは、他の国々がアメリカのシステムに負けないほどうまく機能する経済・社会システムを築くまで続くでしょう。世界経済の先行きには、単純計算が示すものよりはるかに多くの要因が絡んでいるのです。