高い潜在能力は「経験」で開花する

リーダーシップギャップを解決するために練られた方策の多くは、「精緻すぎて、その利点を十分に発揮できていない」と指摘するのは、リーダーシップ・コミュニケーションズ社の管理開発コンサルタントのスーザン・エニスだ。彼女は、高い潜在能力を秘めた社員を発掘するための大がかりなだけで役に立たない分析システムよりも、社員の責任と権限を拡大するほうがはるかに重要と主張している。ティシーも同じ意見だ。「リーダーシップパイプラインの開発を図る際に、システム化されたリーダー開発プログラムに頼る割合は20%にすぎず、残り80%は、社員に的確な実務経験を積ませることによって開発する」。

言葉を換えれば、教室で学ばせるよりも現場での学習を重視するということであろう。「21世紀には、学習する(learning)組織よりも教育する(teaching)組織が重視されるだろう」と、近著の中でティシーは書いている。教育する組織では、学習する組織のように、学ぶことが受け身で終わらないというのがその理由だ。

「教育する組織では、すべてのレベルのリーダーが、部下も自分も賢くなることに責任を負うと同時に、次代のリーダーを教育することにも積極的になる。行動と学習が重視され、CEOも上級レベルのリーダーたちもリーダーの育成に直接的に関与する。リーダーの育成は、もはや片手間にできる仕事ではない。企業の日々の仕事の一部として、企業文化に織り込まれなければならない」

※参考文献
『Execution : The Discipline of Getting Things Done』 Larry Bossidy, Ram Charan & Charles Burck(2002年)
『The Cycle of Leadership:How Great Leaders Teach Their Organizaions to Win』 Noel M. Tichy(2002年)

(翻訳=ディプロマット)