最も人任せにしてはいけない仕事

リーダーシップパイプラインの開発が成功するのは、CEO以下、すべてのレベルのリーダーが、それを自らの優先課題と心得る場合のみである。アライド・シグナル社の前CEOで、ハネウェル現会長のラリー・ボシディは、リーダー育成に手腕を発揮したことで知られている。彼は、アライド・シグナル社での最初の2年間には、1日の時間の30~40%を「リーダーとなりうる人材の雇用、的確な実務経験を得させるための準備そして育成に費やした」と、近々上梓される共著書(文末参照)の中で述べている。

「リーダー育成は、人任せにはできない仕事だ」とボシディは言う。リーダーたるものは、全社を方向づけるのが務めだからだ。リーダーは、部下を同業他社の社員と比較して評価しなければならない。全社で率直な評価がなされるよう努めねばならない。そうした評価によって、社員の強みと改善点を見極められねばならない。

「優れた社員を指導しているのはだれかを知るのも、リーダーの任務だ」と彼は言う。また、実績の劣る社員の排除を怠たらず、常に惰性に歯止めをかけるのもリーダーの任務である。

ある仕事を任せる人材を選別する際には、候補者の適性を判断するだけでなく、さらに上の仕事をこなせるまで成長しうる人材か否かも見定めねばならない。そして、最初にその候補者に与えた仕事を次はだれに引き継がせるか、新たに人材を雇うべきか否かも決断しなければならない。こうした点に注意を向けるのは、その部門と全社にリーダーを育てようとする意識を浸透させるためにほかならない。