2019年、日本郵政傘下のかんぽ生命保険で不正販売問題が発覚した。同社は半年以上にわたって顧客に新旧契約の保険料を二重払いさせたり、特約の切り換えで済むにもかかわらず新契約を結んだりしたとされている。20年2月末時点で、累計2170件の契約で法令・社内規定違反が確認され、関与した郵便局の保険販売員などは1725人に上るという。07年に郵政民営化された日本郵政に一体何があったのか。民営化されたことで過度なノルマが生まれたのが原因との世論も飛び交う。だが、小泉純一郎政権下で郵政民営化担当大臣を務めた竹中平蔵氏が問題の根源を語る──。

なぜ、むちゃくちゃな保険営業が起きたのか

かんぽ生命の不正販問題はなぜ起きたか。あれは郵政民営化のせいだと言う人がいますが、民間の保険会社ではあのようなことは起きていません。今は金利が下がっているからそもそも貯蓄型の保険は売れないのです。だから新しい保険商品をどんどん開発しないといけないのに、完全民営化していないかんぽ生命にはそれができず、既存の商品を無理やりにでも売るしかなかった。完全な民間企業じゃないので、企業活動に制約がかかったのです。

今後、日本郵政が復活するためには、株式売却と、海外戦略だ。
今後、日本郵政が復活するためには、株式売却と、海外戦略だ。(時事通信フォト=写真)

では誰が完全民営化を止めたか。民主党政権です。07年に民営化を開始した郵政は、10年かけて完成する予定でした。それが、09年に民主党政権に代わったことでその計画が崩れました。

まず、民主党政権は株の売却を差し止めました。小泉政権が成立させた郵政民営化法では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は全株式を売却すると定めていました。しかし、民主党は、完全売却をあいまいにしたのです。せっかく始まった民営化が、大幅に後退しました。民のガバナンスが発揮されていないのです。