人材採用は社内外同時に募集をかける

自らのキャリアを顧みて、大きな仕事にチャレンジしたい人もいれば、新たなキャリアにチャレンジしたいという人も発生する。キャリアチェンジを可能にする仕組みが通常の異動とは別に実施する社内公募である。同社ではある部門で人材を必要とする場合、前述のように外部に募集をかけるのと同時に社内ウェブ上でも募集内容が公開される。ただし応募・面接に際しては事前に上司に相談する必要がある。

上司に内緒で面接を受け、合格した後に上司に通知が行くという方式が最近は多い。これには上司が本人の希望を阻んでしまうことを防止する狙いがある。しかし、同社ではあえて上司と話し合いをすることを求めている。

「キャリア面談で、部下が3年間営業をやってきたが、次はマーケティングをやってみたいという中・長期のキャリアプランを上司との間で合意していたのであれば、上司も反対する理由はないし、驚かない。また、止めたいと思っても、本人が最終的に行くのをやめますと言わない限り、引き留めることはできない。むしろ応募に関して上司がアドバイスできる部分もあり、キャリア面談が活かされる場面でもあると考えている」(四方人事本部長)

社内公募は全世界の情報が公開され、海外のマイクロソフトにも応募ができる。公募により米国本社に転籍した社員は昨年度だけで20人以上に上る。

同社は社員満足度調査を毎年実施している。質問内容は大きく七項目に分かれ、その中には「リアライジングポテンシャル」、つまり自分の可能性を実現していくうえで、上司が自分のスキルと能力を上手に活用してくれる、自分が成長できる機会が確実にある、といった内容の設問がある。

その中で「上司と私自身が自分のキャリアやプロフェッショナルな人材開発について意味ある面談を行っている」という設問がある。調査では「強くそう思う」「そう思う」の合計が、前年より5%高い75%に達した。また、リアライジングポテンシャル全体では前年より4%高い80%に達した。07年のキャリアディスカッションが終了した時点の調査結果であり、一連の取り組みが奏功していることが数字にも表れている。

キャリア開発に注力する理由を改めて四方人事本部長に聞いた。

「グローバルに採用活動を展開しているが、とくにインド、中国では過去3年で計約5000人を採用するなど社員も増えている。小さなベンチャーから規模も大きくなるにつれて、マイクロソフトで働く意味とは何か、マイクロソフトに何を期待するのかが改めて問われている。ビジネスが国を超え、社員数もグローバルになっていくなかでもう1度、マイクロソフトが社員にとってどういう価値があるか、マイクロソフトのカルチャーを伝えていくことが重要だと考えている」

マイクロソフトに限らない。グローバル市場で製品や技術が強い競争力を持つことも重要であるが、同時に世界中の優秀な人材から魅力ある企業として“選ばれる”存在であることもグローバル企業の要件である。