マイクロソフトは日々の仕事をベースに本人の成長を促す様々な“仕掛け”を用意している。中心となるのが07年からスタートしたMYCD(ミッドイヤーキャリアディスカッション)と呼ぶキャリア開発面談である。同社の中間期に当たる2月後半から3月までの約1カ月間にわたり上司と部下による一対一のキャリア面談を行う。実施に先立ち、経営トップから面談の趣旨や留意点、スケジュールなどが各マネジャー層に発信される。人事部主導ではなく「例えば営業、マーケティングごとに全世界の責任者である役員からマネジャーとして何をしなければいけないのかといった強いメッセージを直接発信する」(四方人事本部長)という力の入れようだ。

面談に当たっては、その効果を最大限に発揮するための“仕掛け"がハードとソフトの両面から用意されている。ハードの基本となるのが全世界共通のキャリア開発システムだ。全世界8万人の社員が携わる職務ごとに約200に分類したキャリアモデルを構築。具体的には部下の歩んできたキャリアヒストリー、部下自身のキャリアプラン、それに対する上司の所見などがデータベース化され、それを部下と上司が共有している。

まず部下は自分が目指すキャリアモデルのどの位置にいるのか、必要項目ごとに分けた能力レベルのセルフアセスメントを実施。自己評価に対し、上司の評価と所見が示されるなどキャリアモデルに沿って能力のアセスメントが上司と部下の間でできるようになっている。次に自分のレベルと職務に何が求められているかを把握したうえで、自らキャリアプランと必要なトレーニングなどの人材開発プランを作成する。上司はそれを見て自ら考えるキャリアプランなり、開発プランを入力するなど常にシステム上で双方向のやりとりができる。

このツールを使うのはもちろん、マネジャーと部下だけではなく、マネジャーとその上司、さらにその上の上司との間でも行われる。

「最初に部下の自己評価に対し、上司は単にシステム上に書いたものを読むだけではなく、部下の自己評価を聞いたうえで持ち帰り、さらに上司としての能力評価を入力し、それを持って部下ともう一度話し合う場合もある」(四方人事本部長)

システム自体は全世界共通であり、仮に上司がドイツに赴任していてもやりとりが可能であり、本人が米国本社に異動してもデータベースの持ち運びができる。ただし、これはあくまでもハード(仕組み)にすぎない。仕組みを活性化するためのサポート(ソフト)にも注力している。

期間中に最初に開催されるのが、全社員が集まり、各分野の責任者が自らのキャリアヒストリーを語る「タウンホール」と呼ぶ会議で、キャリア開発への意欲を高めるための企画だ。会議に出席できない人は画面上で参加する「ライブミーティング」もある。