2020年4月から、賃金請求権の消滅時効が延長されることになった。すでに、中小企業などでは未払い残業代を請求する若手が激増していた。時効が延長となると請求できる金額が一気に高額になる。この法改正は男女の賃金差別の訴訟にも大きな影響がありそうだ――。
日没時、桜の木々の下に立つ若いビジネスウーマン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)

賃金請求権の時効が原則5年に

政府は未払い残業代などを含む賃金請求権の消滅時効が現行の2年から原則5年、当分の間は3年に延長する労働基準法改正案を今国会に提出。今年(2020年)4月に施行される見通しとなった。

未払いの残業代を請求する場合、退職後に訴える人が多いが、消滅時効が延長されると以前より受け取る金額が増えることで注目されている。しかし、それだけではなく男女の賃金差別をめぐる争いでも、より訴えやすくなる効果も期待されている。

まず法律がどのように変わるのかを見てみよう。現行の労基法の賃金等の請求の時効は「賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」(115条)と規定している。つまり、会社に未払い残業代の支払いを求めて裁判を起こしても認められる未払い分は過去2年分に限定されていた。

今回、消滅時効期間の見直しが行われたのは、その根拠となる民法の債権の消滅時効が2017年に改正(2020年4月施行)され、5年に延長されたからだ。法律のポイントは以下の6つ。