1990年のバブル崩壊以来、日本経済はますます輸出依存を強め、頼みの欧米・中国も問題を抱える。欧米はバブルの後遺症に悩まされ、中国はインフレ懸念から金融引き締めに転じたが、ゆきすぎると株価や不動産価格下落の恐れも。日本経済の行方は諸問題を抱える世界経済次第だが、一方で世界はかつての日本を追いかけているようでもある。

そんな状況下で、内閣府の政策統括官室(経済財政分析担当)が公表した本報告書は、先行きを見通すうえで有用なヒントを与えてくれる。

ギリシャの財政問題がポルトガルやスペインにも広がる兆しを見せ始めているが、本報告書では、ヨーロッパが現在陥っている危機の根本的原因は、財政規律の緩みに加え、「マクロ経済のインバランスの問題」(128ページ)にあると指摘する。投資機会を求めて「ドイツやフランスの金融機関は、ユーロ創設により為替リスクなしでスペイン等の南欧諸国等への投資が可能になり、大量の資金が南欧諸国等やアイルランドに流入」(129ページ)したのであるから、“PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)”問題は同時に独仏問題でもある。日本のメガバンクが積極的に地方のリゾート開発を進め、巨額の不良債権処理に悩まされた90年代の日本の構図と同じである。

今年の日本経済を予測するうえで最も重要なのは、恐らく中国経済をどう見るかにかかっている。本報告書は下振れリスクとして「中国における不動産価格の上昇とそれに対応した引締め強化による内需への影響」や「中国やインドにおけるインフレの加速とそれに伴う消費への下押し圧力」、そして「過度な資金流入」(272ページ)を指摘する。本報告書が公表された後に11月の中国・消費者物価が5.1%上昇し、一段とインフレは加速している。無論、雇用のミスマッチを抱えた米国経済(76ページ)も予断を許さない。

本報告書で最も注目されるのは、各国の財政再建の取り組みを包括的かつ詳細に紹介しながら、日本がなすべきことを示唆していることである。

なかでも、すぐさま実行に移せば効果ありと思わせるのが、オランダの「経済政策分析局」(初代長官はノーベル経済賞受賞学者のティンバーゲン)の例である。分析内容について高い独立性を有する当局が、「選挙の際に、各政党のマニフェストを実現した場合の経済財政への効果を分析し、公表している」(181ページ)。こうした制度を日本でも取り入れれば、マニフェストで約束したことは断固貫くべきか、野党時代に作成したのだから政権を取ったら柔軟に変えるべきか、などと不毛な議論もしなくてすむ。

本書には、日本が他から見習うべき点が満載である。なお、本報告書は内閣府のウェブサイトでも見ることができる。