月払い方式は手軽そうだが
長生きすればするほど支払う額は多くなる

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(老人病院)の「介護保険三施設」だけでは入所希望者のニーズを満たしきれないことを背景に、有料ホームは年々増え続け、3313を数えるまでになった(2008年3月現在、タムラプランニング&オペレーティング調べ)。

そもそも有料ホームには大きく3つの類型がある。ホーム内スタッフによる「介護付」、訪問介護など外部の介護サービスを利用する「住宅型」、そして食事などはつくが介護なしの「健康型」である。「介護付」と「住宅型」で全体の9割以上を占める。

「これまで主流だった『介護付』に代わって、いま『住宅型』が増えています。07年から都道府県や市町村による施設系・居住系の『総量規制』が始まり、介護付ホームの新設にストップがかかったためです。そのため介護付に入りたくても入れない人が増えています」と話すのは高齢者住宅開設、および経営のコンサルティングを行うタムラプランニング&オペレーティングの田村明孝氏である。

このような規制のため、受けるサービスは同じでも施設の分類が異なるなど、素人にはますますわかりづらくなっている。では、どのような視点でホームを選べばよいか。入居希望者の相談業務も行う田村氏は次のように話す。

「まず、自立者向けなのか要介護者向けなのか。次に金額とエリア。そして大事なのは情報開示です。特に見るべきなのは、入居率・退去率(公表していないことが多いが、入居定員と入居者数・退去者数をもとに算出可能)と、ケアマネジャーなどの有資格者数の2つです」

有料老人ホーム、シニア住宅の紹介・相談センター「介護情報館」の館長を務め、2万件以上の相談を手がけてきた介護コンサルタントの中村寿美子氏は、5つの条件を挙げる。

「優先順位は個人で異なると思いますが、(1) 事業主体、(2) 立地、(3) 価格、(4) 建物、(5) サービス内容、の5つが最低条件です。介護の本質がわかっている方は、(5)を重視されますね。ただ、ホームの良し悪しはパンフレットだけでは絶対にわからないので、体験入居をお勧めしています。事業主体も、大手だから安心というわけではありません」

価格は入居希望者にとって最も関心が高いが、わかりづらいのが有料ホーム特有の「入居一時金」である。入居時に支払う料金のことで、「終身利用権という位置づけで始まった」と田村氏は言う。入居一時金の10~最大70%ほどが入居時にホームの利益として償却される(この「初期償却率」は15%程度が一般的だ)。

図1:入居一時金が同じでも、戻ってくる金額はこんなに違う!

図1:入居一時金が同じでも、戻ってくる金額はこんなに違う!

さらに、初期償却を引いた残りの一時金は、入居年数とともに償却される。ホームは初期償却と償却年数を自由に設定できるため、事情があって退去する場合の返還金額の差となって表れる(図1参照)。田村氏は「初期償却」を「もともと長生きする担保として徴収していたもの」と説明するが、なぜこのような仕組みになっているのか。

「マンションと違い、有料ホームは共用部分が広い。そのための施設協力金という考え方です。初期償却率が低く、償却年数が長いホームが利用者にとって良心的といえます。経営状況は財務諸表に示されていますが、初期償却率が高いために一時的に利益が上がっている可能性もあるので要注意」(中村氏)

図2:料金体系を選べるホームが増加中!「月払い」「入居金」の比較

図2:料金体系を選べるホームが増加中!「月払い」「入居金」の比較

従来は一律「入居金方式」だったが、この2、3年「月払い方式」を採用する施設が急増している。前者は入居時に多額の支払いが必要だが、入居後は管理費や食費などほぼ年金の範囲内の支払いで済む。一方、後者は入居一時金を低く抑える代わりに毎月の家賃を徴収する方式である(図2参照)。

「人気があるのは料金体系を選べるホームです。『グランクレール藤が丘』(横浜市)は『入居金方式』と『月払い方式』を設け、さらに入居時の年齢別の料金体系をつくりました。すぐ満室になりましたね」と中村氏は言う。

「月払い方式のほうが手軽に見えるかもしれませんが、長生きすればするほど支払う額は多くなります。また見落としがちなのがインフレ率。毎月の支払額が値上がりすることもありうるからです。結局、寿命はわからないため、正確な比較はできません。むしろ選ぶときに重要なのは『子供に財産を残すかどうか』だと思います。財産を使い切ってもいいなら、入居金方式のほうが安心かもしれませんね」(中村氏)

料金面での比較に加え、サービス面も重要である。前出の田村氏は「いまニーズが高まっているのはターミナルケア(看取り)と認知症ケアです。最期を看取ってくれるか、医療連携はなされているかなどがポイント」と言う。08年2月に読売新聞が行った「全国有料老人ホーム介護・医療体制調査」によれば、「ホーム内でターミナルケアができる」と答えたのは約半数。認知症ケアは約6割だ。

最近では入居一時金ゼロというホームも出ているが、「そのようなホームでは、ターミナルケアはもちろん、風邪などで定期通院の場合、家族に通院の付き添いを連絡してくることも」と中村氏は言う。半面、月額利用料が高額といわれるヒルデモア(東京都世田谷区、川崎市など)はスタッフの数も多く、最期まで看ると明言している。夫の両親を在宅介護の末、自宅で看取った経験を持つ中村氏は言う。

「10~15年後、本当に自分が受けたい介護を実現できるように若い頃から資金計画を立てるべきなのです」