インドのスタートアップの間では、日本の大企業の評判が芳しくない。コンサルタントの繁田奈歩氏は「日本企業は、情報への『ただ乗り』をしがちで、それが嫌われている」という――。

※本稿は、繁田奈歩『ネクストシリコンバレー』(日経BP)の一部を再編集したものです。

テル・アビブの塔と空中イスラエルの空行
写真=iStock.com/WangAnQi
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ニチレイは魚や肉のオンライン販売「リシャス」に出資

日本企業のインド展開は、さかのぼると100年ほど前の商社となるだろうか。80年代にはスズキやホンダが進出したが、その後は緩やかな進出状況だった。

近年では、2009年にNTTドコモがタタ財閥傘下の携帯電話会社に出資し、第一三共も約5000億円を投じてインド製薬大手のランバクシー・ラボラトリーズ(Ranbaxy Laboratories Limited)を子会社化するなど、「インド進出ブームか?」と思わせるような投資案件が複数あった。

だがその進出ブームは長くは続かず、「インドは難しい」という認識が定着していった。そんな日本がインドにまた目を向けつつある。

特に最近は、日本の大企業がインドの市場に参入してくる案件だけでなく、インドのスタートアップとの協業が一つのテーマになりつつある。

シリーズBやCなどのある程度大型の資金調達の時期になってくると、日本の大企業も出資を検討し、単なる資本参加だけではなく、インドのスタートアップを通じた市場アクセスや自社の事業強化などを図ろうとする動きが出てくる。

例えばニチレイがインドで魚や肉のオンライン販売をするサイト「リシャス(Licious)」を運営するスタートアップに出資したのも、中長期的なインド市場へのアクセスを狙ったものだろう。