専業生保はなぜ苦戦を強いられたか

ネット専業の保険料は、年を取ると割高になる
表を拡大
ネット専業の保険料は、年を取ると割高になる

2008年春、ネクスティア生命(旧SBIアクサ生命)、ライフネットというネット専業の生命保険会社が開業した。インターネットに特化した契約や保険料の安さをウリにした新しい生保会社の誕生に、業界の地図は塗り替えられるかに思われた。しかし、読みは大きく外れているようだ。当初、5年後の新規契約目標を、ネクスティア生命(旧SBIアクサ生命)は20万件、ライフネットは15万件としていた。しかし、決算データによると開業1年目の保有契約件数は、ネクスティア生命(旧SBIアクサ生命)が5121件、ライフネットが5116件でいずれも苦戦を強いられている。原因として知名度の低さに加え、保障額を契約者自らが決定することの難しさが挙げられる。

大手国内生保の主力商品はさまざまな特約を組み合わせたセット商品で、営業職員が保障額の入った設計書を作ってくる。それを見て「そんなものか」と思って加入するのがこれまでのパターンだ。内容が適切であるかどうかは別として、契約者自らが保険金額を考えることは少ない。

その点、ネット専業生保の商品はシンプルでわかりやすく、不要な保障を買わされることもないので保険料も割安だ。上手に使えば家計防衛に役立つことは事実だろう。ただし、人を介さない契約は煩わしさがない分、保障額の決定から加入手続きまですべて自分で行うことになる。多くの人にとって保障額の決定は迷いを生じるポイントで、そこが落とし穴になる。

各生保会社のサイトには、必要保障額のシミュレーターが用意されていることが多い。そこに自分の年齢や家族構成を入力すると保障額の目安が計算できるようになっている。しかし、年収や家族構成が同じでも、個々の条件によって必要保障額は大きく異なる。また、生命保険文化センターのデータを基にした各年齢の平均加入保険金額などが載っていると「自分もこれくらい加入しなければならない」と誘導されがちだ。こうしたシミュレーターや平均値を鵜呑みにするのは、自らの意思で保障額を決定したと見せかけ、その実、営業職員が保障額を提示する生命保険に加入するのとなんら変わりない。いくら保険料が安くても、不要な保障をまで買ってしまっては、せっかくの見直しも効果が半減してしまう。